今年も新卒採用のシーズンが到来し、筆者も企業の人事担当者やトップを取材する機会が増えました。そんな中、ワークライフバランスについての興味深い話の数々を耳にします。今回はワークライフバランス(以下WLB)の観点から幸せなキャリアづくりについて考えてみたいと思います。

 

■ “ライフ”を優先したい人ほどワークライフバランスを口にする!?

あるアパレル企業の採用担当者は、きっぱりこう言います。「新人のうちからWLBを重視したいと発言する人は採用しない」。——私はこの一言でモヤモヤしていた部分の合点がいきました。

実は、最近お会いした女子学生や、第二新卒枠で就職活動中の女性が口々に「就職先を選ぶ際に重視するポイントはWLB!」と話すことに違和感を覚えていました。とても前向きな方ばかりなのですが、よくよくお話を聞いていくと「できるだけ残業は避けたい」、「ハードワークは避けたい」といったライフ重視のホンネが見えてくるのです。もちろん、それ自体が悪いとうことではないのですが、私が感じた違和感は、このような働き方を希望する方が発するWLBという言葉。どこか本来の意味から離れていて、耳障りのいい言葉としてリメイクされているような気がしたのです。

 

■ ワークライフバランス、3つの誤解

誤解1.  仕事はほどほどにして生活を楽しむこと

誤解2.  労働時間を短縮すること

誤解3.  育児や介護などを行う女性が、家庭と仕事を両立すること(またはその支援)

そもそもWLBとは、個人の働き方や企業の制度を見直すことで相乗効果を生み、充実度が高まるという考え方。イメージで何となく理解したり、一部だけを拡大解釈したりすると誤解が生まれやすくなるようです。

 

■ 長期的に見たワークライフバランスを大切にしよう

あるコンサルティング会社のトップはこう話します。「1日や1年という短期的な枠の中でWLBを捉える方が多いのでは? 40代や50代になっても一日中外回りやプロジェクト監督をするわけではないのだから、20代はがむしゃらに働いてほしい」。

別のIT関連会社の採用担当者も、若いうちは仕事の比重を多めにしてバリバリ働く位のほうが将来のためになると言います。「柔軟性があってフットワークが軽いうちは、多少プライベートを削ってもキャリア形成にどん欲であってほしい。目先のWLBにとらわれすぎて成長の機会損失をしてほしくない」。

女性の管理職育成に意欲的なベンチャー企業の採用担当者は、「女性の方が短期的なWLBを意識しやすいけれど、妊娠・出産などのライフイベントの影響を受けやすいからこそ、メリハリのある働き方を意識してほしい」と話しています。

幸せなキャリアづくりのためには、一時的にバランスを欠くことがあっても、長い目でみたときに充実したキャリア・人生になるよう、働き方をイメージすることが大切ではないでしょうか。

[執筆: 渡辺 さちこ(「妊きゃりプロジェクト」主宰 ]

 

【参考】
株式会社ワーク・ライフバランス 「3分でわかるワークライフバランス」
※ 本田直之 (2013) 『あたらしい働き方』ダイヤモンド社 
※ 高橋俊介 (2004) 『スローキャリア 』PHP研究所