母娘問題カウンセリングを行っている筆者のところには、相談者が様々な悩みを抱えて来られますが、最近、高齢化社会を反映しているのか、次のような相談を受けることがあります。

それは、母親が父親の浮気を疑うというものです。

「1年前位から、母が私に泣きついてくるのです。それは、父が他の女性と付き合っているというのです。父は70代後半で、いまさら浮気なんてできる歳でもないし、母とはとても仲が良かったのです。それなのに……」と話すC子さん(38歳)。

以前、夫婦で旅行に出かけたときも、父と付き合っている女が来ていてロビーで会っていたに違いないと、母親は言い張ります。すっかり疑い深くなった母親の行動はエスカレートし、探偵を雇って父を尾行させたり、弁護士事務所を訪ねて離婚の相談や、財産は全て娘に残すといった遺言書を作成するまでになりました。

 

■ ご存知ですか? 高齢者の嫉妬妄想症

最近は、似たようなケースの相談を受けることがあります。伴侶が浮気をしていると思い込んでしまう「嫉妬妄想症」についての認識はなく、家族が振り回されるといった内容です。

熊本大学医学部付属病院神経精神科の橋本衛氏の発表によると(※)、嫉妬妄想は、あらゆる精神疾患で認められる妄想ですが、器質的病変との関連性が高く、認知症患者の2.3%~15.8%に伴うことが報告されているといいます。

しかし、日常生活に支障がなく普通に暮らしている高齢者が、嫉妬妄想で伴侶の浮気を疑うようになった場合、家族が真実だと間に受けてしまうこともあるのです。

C子さんも最初は母親の言うことを信じ込み、父親に不信の目を向けたと言います。「人生最後のときを浮気で終わらせるなんて、父親が許せなかったし、母親がかわいそうでしょうがなかった」。

その後、老人会で一緒の女性や、叔母との関係まで母親が疑い始めていることにC子さんは疑問を持ち、心療内科に行って相談したところ、嫉妬妄想症だということがわかったのです。

「私は、父ともけっこう話をする方なので、父がそんなことをする人ではないという気持ちが強かった」というC子さんですが、母親は認知症と思われる症状がほとんど見られないため、あやうく父を誤解しそうになったといいます。

 

高齢者人口の増加により、今後このようなケースが増える可能性もあります。大事なのは、日頃から家族のコミュニケーションをとっておくことでしょう。もしもというとき、信頼関係ができてさえいれば、妄想に振り回される前に、真実を見極められるはずです。

[執筆:真香(母娘問題カウンセラー) , 2014年3月11日]

 

【参考】
※ 橋本衛(熊本大学医学部付属病院神経精神科)公益社団法人 日本老年精神医学会「認知症に伴う嫉妬妄想の臨床特徴とその対応法」第28回日本老年精神医学会より