女性にとって、自分の母親は、最も近しい人生の先輩。何かと頼りになる存在ですが、その距離の近さが軋轢を生み、いつの間にか深い溝ができることも…。今回は働くアラサー女性たちが直面しやすい母娘間の確執、「母娘クライシス」に迫ってみたいと思います。

 

■ 10年間、溜め込み続けた違和感

働く妊活女性との交流会でお話を伺った33歳のAさん。不妊治療を目的に、昨年大手メーカーを退職され、現在はパートをしながら妊娠に向けた治療を頑張っています。

Aさんによると、母親との会話で最初に違和感を覚えたのは、大学卒業のころでした。「私はあなたの年で母親になったのよ」という何気ない一言。コンサルティング会社の総合職として新たな第一歩を踏み出そうとした矢先だけに印象的だったといいます。

その後、Aさんは28歳で転職を決意。母親に報告した際に、「転職より先に考えることがあるのでは?」と言われたのがショックで…と続けます。31歳で結婚したときには、待ってました! と言わんばかりに「もうすぐ孫の顔が見れる」と大はしゃぎ。しばらく仕事を続けたいというホンネは、とても言えるような雰囲気ではなかったそうです。

 

■ 母親世代の「女の幸せ」ベルトコンベアーはもうないから

筆者は、働く女性のみなさんとお会いするなかでAさんのようなケースによく出会います。一体なぜ、母親との関係に悩んでしまうのでしょうか。

そもそも、アラサーを育てた母親世代の女性のライフコースはみんな似たり寄ったりでした。1980年代当時、多くの会社は、寿退社を前提に女性社員を雇い、定年30歳というのが暗黙の了解でした。25日を過ぎたら売れなくなる「クリスマスケーキ」に女性が例えられ、早々に結婚して家庭に入り、子どもを産むことが「女の幸せ」とされていた時代。Aさんの母も、まさにそうしたライフコースを歩んできた一人です。

話を現代に戻しますが、筆者がお会いする20代・30代女性の中には、すでに3社以上の会社を経験している人も少なくありません。「今は仕事の頑張り時! 結婚はしたいし、子どもも産みたいけど、まだ先でいいかな」との声も聞こえるなど、母親世代とは違い、多様な生き方や価値観に触れられます。男性の非正規雇用や低賃金といった背景もあり、いまはもう多くの女性が結婚で食べていける時代ではなくなってきています。そのため、結婚後も仕事を続ける娘とその母もまた、産み時をめぐって摩擦が起こりやすくなっています。

 

■ 適度な距離でほどよい関係を

Aさんは現在、不妊治療中ですが、母親には内緒にしているといいます。理由は「だから言ったじゃない」と頭ごなしに否定されるのが嫌だから…。「悪気がないのは分かっているけれど、母と私では時代感覚と価値観が違いすぎるんです」。Aさんは、今後これ以上自分が我慢をしないためにも、一定の距離を保ち接していこうと決心しました。

距離が近く、遠慮がない関係だからこそ悩む母娘間の関係。全てを分かり、分かってもらうことは難しいかもしれませんが、程よい距離と冷静な感情で向き合うことが大事なのかもしれませんね。

[執筆: 渡辺 さちこ(「妊きゃりプロジェクト」主宰), 5月20日]