■ 母親と一緒に暮らすのは嫌

母娘問題カウンセリングを行っている筆者のところに、20代後半のクライアントC子さんが来られました。相談内容は「何もする気になれない」というもの。C子さんは幼い頃から母親のしつけが厳しく、何をするにも指図されたと言います。成長して洋服の好みが出てきても、母親が気に入ったものしか着られませんでした。やがて進学や就職を決める際も、母親の意見が反映されるようになりました。

高校生になったC子さんは、こんな母親とは一緒に暮らしたくないと思うようになり、学校を卒業したらいつか絶対に家を出ようと思い始めたそうです。

 

■ 目の前にある自由を取らず、あえて母親のもとにとどまる

その後、C子さんは学校を卒業し、母親が望んでいた大企業に就職します。お給料も多く家賃を払ってもやっていけそうです。そして何より驚いたことに、母親が「これも人生経験だから」と娘の一人暮らしに前向きな姿勢を見せてくれたのです。

ところが結局、C子さんは一人暮らしをせず実家から通っています。なぜ、一人暮らしの夢が実現できそうなのに自ら放棄してしまったのでしょうか? その理由は、C子さんが“学習性無力感”に陥ってしまった可能性があります。

 

■ 学習性無力感とは?

学習性無力感とは、あまりに強い支配やストレスが長期間に渡って続いた場合に、「たとえ努力しても、辛さや苦しさから逃れることはできない」と学んでしまい、無力感にとらわれることをいいます。C子さんも長い間、母親からコントロールされ抵抗しても無駄だと思うようになってしまったのです。自由はすぐ目の前にあるのに、あえて母親の支配下に居ようとする。実は、C子さんと同じような状況にあるクライアントは結構いるのです。

このようなケースでは、無力感をもっていることに対する本人の気付きが必要ですが、現段階では他人からの励ましやアドバイスは余計に苦痛に感じられるかもしれません。

まずは自分にできる小さな事から始めてみましょう。例えば、早朝散歩など楽しみながらできるテーマを決め、1週間のうち3日できたらクリアしたことにします。それに対するご褒美もつけてください。テーマの内容レベルを少しずつ上げていき、最終目標を一人暮らしに設定することもできます。

長期にわたって学習してしまった無力感を短期間で解除するのは難しいですが、変容させる方法はあるのです。もちろん、カウンセリングもそのひとつです。

[執筆:真香(母娘問題カウンセラー), 2014年9月17日]