筆者が担当する「新任管理職研修」にて、「部下に仕事を教えるとき、叱って育てるほうがよいのか、それともほめて育てるほうがよいのか」という質問をよく受けます。自分たちが新人の時はまさに「叱られながら」育てられた世代であることが多く、つい同じように接してしまいがちだけれど、今の若手社員はすぐパワハラだといって辞めてしまいそう、という不安があるようです。

 

■ 「ほめて育てる」効果とは?

この効果を実験で証明したのが、アメリカのローゼンタールという心理学者でした。彼はサンフランシスコの小学校にて、「今後数か月以内に成績が伸びる生徒を見つけ出せる学習能力予測テスト」を実施しました。そして後日、担任にだけ「成績が伸びる」生徒の名前を伝えましたが、実はこのテストはまったくのでたらめで、成績が伸びると伝えられた生徒も無作為に選ばれた嘘の情報でした。

しかし、嘘の情報だったにもかかわらず、1年後その生徒たちの成績は本当に向上したのです。成績が伸びると信じた担任が、期待を込めて彼らを指導し、彼らもその期待に応えるため努力したからだといわれています。この効果を「ピグマリオン効果」と呼びます。

 

■ ほめても十分に人は育つ

この効果は教師と生徒だけでなく、上司と部下、親と子などにも適用することができます。「あまりほめすぎても、つけあがるだけ」「ほめるところがみつからない」など、否定的な考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、心理学的には「ほめても十分育つ」ことが、先の実験で証明された形になります。

さらに、ほめることには良い行動の習慣化につながるというメリットもあります。一方叱った場合は、「怖いからしっかりやらなければ」と緊張感が生じるために瞬発力は働きますが、継続効果は望みにくくなります。

 

「人は常に、相手の期待に対してもっとも敏感に反応する」と、先ほどの実験を行ったローゼンタールは述べています。ほめるやり方は叱るやり方よりも効果が出るまでに時間がかかりがちですが、焦らず相手を信頼する勇気を持つことが必要だといえます。

[執筆:浅賀 桃子(メンタル心理・キャリアカウンセラー), 2015年7月6日]