女性が働きやすい環境づくりが進められ、出産後も働き続ける女性が増える一方で、晩婚・晩産化の影響などからなかなか子どもを授からず、不妊治療と仕事の両立に苦労する人も増えています。

 

9割もの女性が「両立困難」と回答

不妊治療患者を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」による最新のアンケート調査(※)によれば、不妊治療経験者の約9割が、仕事と治療の両立を困難と感じ、そのうち約4割が転職や退職といった勤務状況の変更を迫られた経験があるとのことです。その理由は多い順に下記の通り。

1. 通院回数が多い

2. 診察や通院に時間がかかる

3. 精神的な負担が大きい

 

「理解の得にくさ」によるストレスが大きい

働きながら治療をしている女性のうち、68.8%が「職場で治療をしていることを周囲に話しづらい」と回答しています。不妊は従来の病気とは異なるデリケートな内容ゆえ、「できれば言いたくない」というのが多くの当事者のホンネ。とはいえ、治療の段階によっては通院頻度が増え、急きょ遅刻や欠勤をすることも想定されるため、仕方なく職場に報告している人が少なくありません。

本調査では、上司に体外受精を伝えたところ思わぬ暴言を吐かれた、という例が紹介されていますが、当事者にとって圧力や偏見によるストレスは相当なもの。筆者の周りにも当回しに退職を奨められた方がいますが、多額の治療費を捻出するため働かざるを得ない家庭が多いのも事実。不妊治療と言えども、最終的には「授かり物」の世界……期待と失望を繰り返す当事者にとって、仕事上でのストレスは大きな追い打ちです。

 

直接的な不妊サポートよりも、就業環境そのものの改善を

本調査によると、妊活中の社員をサポートする制度がある企業はたった5.9%とのこと。とはいえ「制度があっても使ったことがない(使いにくい)」と答える人が半数近くにのぼっていることから、本当に必要とされているのは直接的な不妊サポートよりも、柔軟な就業環境や働く人の意識改善だといえそうです。具体的には、有給休暇の積極的な利用や、時短・フレックス制度の利用、長時間労働の是正など。当然、これらは不妊治療に限らず、育児中、介護中の社員にも適用できる制度なので、ライフイベントで働き方を調整したい全ての人に有効です。

今後ますます厳しさを増す少子高齢化。不妊治療に限らず、さまざまな制約がある人が両立しながら働ける環境づくりと意識改善が不可欠ではないでしょうか。

[執筆:渡辺さちこ, 2015年9月4日]

 

【参考】
※ NPO法人Fine「仕事と治療の両立についてのアンケート調査結果報告」2015年8月
※ 写真:Taka / PIXTA、本文とは関係ありません