子供の頃、母親から無視された記憶はありますか? 朝起きて「おはよう」と声をかけても返事をしない母親。ただ黙って朝食準備の野菜を刻む、うつむき加減の母親の表情は読み取れません。

「また、何か母を怒らせることをやってしまったのかな……」。自分に問いかけても答えは出ません。なぜなら、子供が悪い事をしたわけではないのです。たまたま母親の機嫌が悪かったから。夫婦喧嘩で気分が滅入っているから。原因は母親の側にあるのですが、怒りを処理できず鬱憤を晴らしたい。そんなときの母親は、子供を無視する可能性があります。

しかし子供にしてみれば、なぜ急に母親から無視されるようになったのか分かりません。自分のせいだと思い込み、一生懸命原因を探ろうとするでしょう。

平成24年の厚生労働省の虐待に関する調査では、虐待者の57.3%が実母という結果が出ています。また、どのような虐待を受けたかの種別を見ると、ネグレクトについては28.9%とかなり高い数字になっているのです。

 

■ 常に人の顔色を窺ってしまう

理由がわからないまま母親から突然無視される。これは子供にとって恐怖になります。さらに大人になっても、何か気に入らないことがあると相変わらず無視する母親も。

このような環境で成長した娘さんは、母親だけでなく、常に他人の顔色をうかがう癖がついています。友人、職場の上司、同僚、彼氏にいたるまで、何かの拍子に表情が少し曇っただけで、自分が何かしたしたのではと思い、気になって仕方がなくなります。

「私が何か変なこと言った?」とかご機嫌伺いのような態度を取り、それが、相手にしてみれば必要以上に気を使われているように思われ、ときには疲れを感じさせてしまうこともあるのです。

 

もし、これと同じような状況に心当たりがあるなら、「母親に無視されたぐらいで、こんなに気持ちが揺らぐのはおかしい」と流してしまわずに、子供時代受けた無視が恐怖に近いものであること。それがトラウマになっていると認識する必要がある場合もあります。

トラウマだと認めてしまえば、克服のための本を読んだりワークショップやカウンセリングを受けることもできます。子供の頃に受けた心の傷は、大人になって解消されるわけではありません。トラウマだと自覚することが、克服のための第一歩となるのです。

[執筆:横山 真香(母娘関係改善カウンセラー), 2015円10月31日]

 

【参考】
厚生労働省「児童虐待の定義と現状」
※ 写真:Ruslan Merzliakov / 123RF.COM、本文とは関係ありません