「夫婦関係が悪化したのが原因で、家出して半年経つんです。」困った様子で、夫婦カウンセラーの筆者のもとにやってきた30代のAさん。詳しく伺うと、家を出てアパートを借り、そのまま別居生活に。夫から、「別居は違法だから慰謝料を支払え」としつこく言われ、困っているとのこと。

 

■ 法律で定められている夫婦同居の義務

日本の法律では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。戸籍上の夫婦である以上、何の理由もなく勝手に家を出てしまうと、「悪意の遺棄」とみなされ、義務違反として慰謝料を請求される場合があります。

ただし、仕事の関係でやむなく配偶者が単身赴任している家庭や、夫婦同意のうえで、別居生活を送っている例もあります。そのような場合、夫婦が同居していないからといって、罰則や強制が働くことはありません。正当な理由があれば別居は認められるのです。

 

はたして、こちらのAさんの場合は、同居義務違反に該当するのでしょうか? 論点は、「悪意の遺棄」や「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるかどうか。

夫婦が一緒に暮らせない理由があり、別居に至る経緯が正当だと認められれば、同居義務違反には当たりません。「なぜ、自分がこのような状況になったのか」「なぜ、別居せざるを得なかったのか」という理解が得られれば、慰謝料を支払う必要はないでしょう。

調停となってしまった場合は、「夫にどんなことを言われ、どう感じたのか」「夫のどんなところが嫌だったのか」、自分の気持ちを文書化して備えておくといいでしょう。詳しくは、弁護士に相談を。

ちなみに別居中は、離婚が成立するまで、収入の多い配偶者から婚姻費用(生活費)を受け取る権利があります。

 

■ 別居期間が短くても離婚が認められるように

別居期間が長引くと、「婚姻関係はすでに破綻している」とみなされ、裁判でも離婚が認められやすくなります。昭和初期頃は、別居期間が約30年と長期でしたが、最近は、約5年程度と格段に短くなりました。

「破たん主義」といって、「夫婦間の共同生活関係が客観的に破綻し、和合関係の見込みがなくなった場合、責任の有無を問わず離婚を認める」という考え方が優位になっているのです。

とはいえ、もちろん短絡的な別居は避けたいもの。経済的にも精神的にも負担が大きい「別居」。よくよく考えて行動に移す慎重さがほしいところです。

 

[執筆:渡辺 里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー),2015年11月8日]