第三次安倍改造内閣は「新3本の矢」のひとつに「介護離職ゼロ」を打ち出しました。なぜいま、「介護離職ゼロ」なのでしょうか? 本コラムでは、働き方コンサルタントの立場から、仕事と介護の両立をめぐる政策の背景とこれから求められる働き方について解説します。

 

■ 10年後には介護離職者が急増

介護を理由に仕事を辞める介護離職者は、年間約10万人といわれています。さらに10年後の2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり、団塊ジュニアの介護離職の急増が危惧されています。
少子高齢化で労働人口が減るなか、働き盛りの社員の離職は企業にとって大きな損失。「新3本の矢」の「介護離職ゼロ」には、労働者が仕事と介護を両立できる環境を作って労働力を確保し、国としての経済力を維持していこう、という意図が込められているのです。

 

■ 利用されていない「介護休業制度」

育児・介護休業法により、企業には「介護休業制度」などへの対応が義務付けられています。「介護休業制度」では、対象家族1人につき、要介護状態にいたるごとに1回、通算して93日まで介護休業が取得できるとされています。ですが、仕事と介護を両立しながら就労している人への調査では、「介護休業制度」を利用した人はたった5.2%でした(※1)。

 

■ 求められるのは柔軟な働き方

一方で、利用率が高かったのは「半日単位、時間単位の休暇制度」(19.1%)や、「遅刻、早退又は中抜けなどの柔軟な対応」(16.7%)といった、柔軟な働き方に関する制度でした。

これまで、柔軟な働き方というと、子育て中の女性社員の「仕事と育児の両立支援」という文脈で語られることが多い印象がありましたが、「仕事と介護の両立」の実現にも柔軟な働き方が必須です。

 

育児や介護中の社員がほかの社員に気兼ねして利用しにくい、「形だけの制度」では意味がありません。これからは、性別や年齢、理由に関わりなく柔軟な働き方を利用できる制度の構築や職場の環境、風土づくりが求められています。筆者としては、フレックスタイム制度やテレワーク(在宅勤務制度)の組み合わせなどによって、柔軟で生産性の高い働き方が普及することを期待しています。

[執筆:椎葉 怜子(働き方コンサルタント/キャリアカウンセラー), 2015年11月10日]

 

【参考】
※1. 厚生労働省「25年度 仕事と介護の両立支援事業 介護離職を予防するための職場環境モデル」pp.9
※写真:よっし / PIXTA、本文とは関係ありません