企業の経営者は、自分の娘が、女性が働きづらい日本の労働環境の壁にぶつかった時、本気で女性活躍について考える――。このようなお話を、筆者の師匠である慶應大学名誉教授の花田光世先生に以前よりうかがっていました。今回はまさに、そのお話にあてはまる事例として、昨今働き方の改革で話題となっているSCSK株式会社の中井戸信英会長のお話をご紹介します。

 

■ 孫育てに関わり、働く女性への理解深まる

2015年10月31日付け『日経新聞』によれば、中土井会長は2012年初め、孫を産んだ会社員の娘が産後8カ月で復職した際に、家計が苦しいのではと誤解して「生活費が足りないなら援助する」と提案したところ、娘に怒られたそうです。

その親子ゲンカから、収入の問題ではなく仕事に情熱を持って続けていきたいという気持ちを理解した会長。そして、「仕事で輝きたい」と望む女性が社内にもいるはず、とダイバーシティ推進課をつくり、子育て支援策の拡充と女性の積極登用を指示したとのこと。12年4月に女性管理職は13人でしたが今は54人。さらに18年度100人を目指す躍進ぶりです。

 

■ 働き方改革の成功

同社は、女性活躍推進だけでなく、13年度から午後5時40分の定時退社を実施。業績は堅調で生産性の向上を実現しているそうです。激務といわれ残業が多いのが当たり前というSEの職場も、トップの鶴の一声から管理職が本気で取り組むことで無駄な業務を無くし、残業時間の削減に成功した非常に素晴らしい事例ですね。育児中の社員から「残業がないなら」と時短勤務を見直し、定時を選ぶ人が出てきた上、2人目の子供を産むケースが増え、女性社員の出生率が上がったというから驚きです。

 

■ 管理職を動かすにはトップの強い意志が不可欠

政府は14年6月に「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」をつくり、女性活躍推進に熱心な大手企業経営者や首長らが集まり、情報交換するなど連携しているとのことで、こうしたSCSK社のような好事例がたくさん出ることを筆者も祈ります。

最近、ワーキングマザー側のお話を聞いていると、60代のお爺ちゃん世代が息子の嫁や娘が働き続けることに反対し、専業主婦になって孫の育児をするように圧力をかける事例もよくうかがいます。女性側も働く意味や意欲をしっかり伝え、子育てへの工夫や配慮を理解してもらう努力をする必要がありそうですね。

[執筆:藤崎 葉子(キャリア アドバイザー), 2015年12月2日]

 

※写真:【Tig.】Tokyo image groups / PIXTA、本文とは関係ありません