近年、母乳育児のメリットがWTOやユニセフによって認知され、実際に母乳育児を推進する病院も増えています。ユニセフによると、母乳は赤ちゃんにとって必要な全ての栄養素を兼ね備えた「完全食品」であること。また、成長に必要な栄養素のみならず、様々な病気やアレルギーから赤ちゃんを守る免疫物質も含まれていること。そして、授乳時にお母さんと触れ合うことで、赤ちゃんの精神的な発達にも大切な影響を与えていると言われている、とあります。

 

■ 母乳育児真っ盛り、辛い思いをしているママも

筆者もプレママの時、病院の母親学級にて「分娩後すぐに授乳できるように、妊娠中から自身の乳房をケアしましょう」と説明がありました。たしかに母乳育児は赤ちゃんとママにとってメリットが多いかもしれません。しかしながら、母乳育児まっさかりの今、母乳が出ないママは追いつめられるケースもあるのです。産科女医の宋美玄先生の「踊る産科女医」には、実際に母乳が出ずに辛い思いをした女性の経験談が掲載されています(※1)。

 

■ 「母乳で育てないと愛情の無い子になる」と助産師に言われ……

出産前から母乳育児でと意気込んでいたママ。ところが出産後4日経っても母乳が出ないのです。「母乳で育てないと愛情の無い子になってしまうのよ」と助産師さんに言われていたことが頭にあり、自分は母親失格なのだとひどく落ち込んだようです。産後1か月経っても母乳は思うように出ず、赤ちゃんの大泣きする声でノイローゼになりそうに。周りからは「なんで出ないの?」「ミルクの足し方が悪いんじゃない?」など言われて、更に落ち込みます。結局ミルクを足す回数を増やしたら赤ちゃんの大泣きもおさまり、自身もゆとりができたとのこと。「母乳が出ない人は出ないので、あまり『母乳で育てられなければ母親失格』みたいに言わないでほしい」とは経験者のママの言葉です。

「母乳で育てないと愛情の無い子になってしまうのよ」これは助産師さんの主観であり客観的事実に基づいたことではないのです。母乳と粉ミルクで育った赤ちゃんの愛情を、数値化して比較した統計はあるのでしょうか? そもそも愛情をどう数値化するのかも疑問です。病院関係者は、母乳育児を推進することも大切ですが、母乳が出ないママ達の気持ちにも寄り添ってもらいたいもの。自分の体験や常識が全ての人達に当てはまるとは限らないのです。

 

■ 赤ちゃんのママはあなただけ

赤ちゃんはいつだって「ママ、だ~い好き」とあなたに両手を広げているのです。どんなあなたでもいつだって、あなたのことが大好きなのです。赤ちゃんからの愛情をたくさん受け取ってください。そしていっぱい赤ちゃんを抱きしめて愛情を示してあげてください。赤ちゃんにとってママはあなただけなのですから、周りの意見に振り回されることなく、自信を持ってくださいね。自分の信念や意見以外のことで振り回されるよりも、自分の信条や愛情を大切にした方が人生はぐっと豊かになるのですから。

[執筆:久保木 惠子(コーチ), 2016年5月31日]

 

【参考】
※1. 吉川景都, 宋美玄(2011)『踊る産科女医』小学館