少し前に、テレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』の番組内で、「卒婚移住」というタイトルで、あるご夫婦が紹介されました。夫婦問題に特化したカウンセリングを行う筆者にとって、熟年世代のいまどき結婚スタイルの一例として、大変興味深い内容でした。

 

■ 人生の第三幕、「卒婚移住」!?

「卒婚」とは、夫婦の役割に縛られることなく、それぞれが自由なライフスタイルを謳歌する夫婦形態のこと。婚姻関係を結びながら、夫婦それぞれが自分らしく生きることを選択する結婚の新しいカタチです。

番組内で紹介していたのは、現在、茨城券城里町に移住している67歳と68歳のご夫婦。ですが、じつは、奥様が、陶芸に集中するため、57歳のとき、ご主人をおいて家を出たのだそう。ご主人は、仕事の関係で家を離れるわけにはいかず、そもそも田舎に行くつもりもなかったそうです。

奥様いわく「子育てが終わってから始まる人生は、自分のために使いたかった」とのこと。いわば、人生の第三幕。妻が自分らしく生きるための人生を選択したといえます。「こうした事態に直面すると、女性の方が強いですね」とご主人。妻の意向を汲む以外に方法はなかったそうです。

自分らしい生き方を追求し、陶芸に集中し、腕を上げた結果、奥様が手掛ける作品には高値が付いているほどです。

 

■ 自由と寂しさは裏腹

奥様が家出して残されたご主人は、というと、「正直、寂しかったですね」と話します。すると、「私も寂しかったですけど、自由と寂しさは裏腹ですからね」と奥様。

別居後、ご主人は時折、奥さまの住む家を訪ねて、陶芸工房を創ったり畑仕事をしたりと、時々一緒に暮らすスタイルに移行。そしてご主人が65歳で定年を迎えてからは、田舎での新たな同居生活がスタートしたそうです。

ご主人 「いまさら“一緒に住もう”とは言いづらかったですけどね」
奥さま 「“来るならどうぞ”という感じ。第二の同棲の始まりですね」

熟年世代ならではの達観した会話のやりとりに、妙に感心した筆者でした。

 

■ 熟年世代の結婚生活で大切なこと

番組出演者からは、「夫が妻のロマンに付き合った感じがして、そんなにうらやましくないなぁ」という男性の声もありましたが、皆さんは、どのような感想をお持ちでしょうか? 依存や甘え、支え合いはもちろん大切ですが、その度合いが強すぎたり、バランスを崩したりすると、やはり双方ともに苦しくなるのではないでしょうか。

結婚生活は夫婦が基本ですが、結婚生活が長くなったいま、こちらのご夫婦の例のように、熟年世代以降は、夫婦が常に一緒にいて、役割に縛られる必要はないのかもしれません。夫婦関係・離婚カウンセラーとして、筆者は「人は、ひとりひとり自立して生きていくこと」の大切さを感じています。

[執筆:渡辺 里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー), 2016年7月18日]

 

※写真:PIXTA、本文とは関係ありません