障害のある人の兄弟姉妹のことを平仮名で「きょうだい」といいます。障害のある人のご家族がメディア等で紹介されるとき、ほとんどは「親」に焦点が当てられており、「きょうだい」について語られることは稀です。ですが幼少時から、他人には言えない不安や生きづらさを抱えているきょうだいは少なくありません。ご自身もきょうだいであり、きょうだいに向けた活動の専門家として活躍中の持田恭子さんにお話を伺いました。

 

■発信しようと思ったきっかけは「相模原障害者施設殺傷事件」の報道

2017年9月、持田さんは初の著書『自分のために生きる』を刊行。この本ではライフサイクルにおける、きょうだいを取り巻く様々な課題を取り上げています。執筆当初は、きょうだいのロールモデルになればと、ご自身の経験を中心に筆を進めていたそうです。しかし2016年夏に起きた「相模原障害者施設殺傷事件」のニュースを目にした後、知的障害者に対する世間の誤解や報道の在り方に深く心を痛めた持田さんは、自分の経験を伝えるのは後でよい、社会が知的障害に対して理解が乏しいことから派生するきょうだいの生きづらさについて伝えたい、と本の内容を変えることを決意したそうです。

 

■きょうだいが抱える生きづらさとは

持田さんが主催する「きょうだいの集い」には全国各地からきょうだいが集まります。そこから浮かんできたのは、きょうだいが持つ「漠然とした不安」と「生きづらさ」でした。彼らは「いつかは自分が兄弟姉妹の面倒をみないといけないかもしれない」と、自分の生き方に制限を感じてしまいがちです。周りには知的障害者を知らない人が多いので、悩みを共有する機会が少ないのです。

例えば、思春期の頃、身近な大人に進路相談をすると「自分の人生は自由にきめていい」とアドバイスされることが多いそうです。本質的には間違っていないかもしれませんが、彼らが抱えている将来の不安は解消されません。そして、自分は誰からも理解されないと孤独に悩むきょうだいは少なくないのです。

 

■「生きづらさを抱えている人」にこそ知ってほしい

最後に、この本をどういう方に読んでほしいか持田さんに伺ってみました。

持田さん:「生きづらいのは、他者から一定の枠の中で生きることを強いられるからです。周囲の無理解さにより不本意な気持ちを溜めすぎると、自分の本当の気持ちまでも押し込めてしまいます。本書は、障害者のきょうだいや家族や支援者のみならず、似たような生きづらさを抱えるすべての人に読んで頂きたいです。生きづらさの根源は自分自身に問題があるのではないことを知り、本当にやりたいことに向かう自分作りをするきっかけになってくれたら嬉しいです。」

今まであまり語られることのなかった、きょうだいのこと。障害者のきょうだいや家族や支援者のみならず、生きづらさを抱える方に、持田さんの本や活動を知ってもらいたいと思います。

[執筆:ノーツマルシェ編集部, 2017年12月14日]

 

【参考】
※1. 持田恭子(2017)『自分のために生きる ~知的障害者のきょうだいが立ち向かう課題~: きょうだいは、自分の人生を生きていいんだよ』Amazon Services International, Inc.
お話を伺った持田恭子さんについて