現在、日本では6組に1組のカップルが不妊に悩んでいると言われています。最近では、その原因は女性だけでなく、半数近くが男性にあると指摘されるようになるなど、不妊症への社会的関心も高まってきました。日本の生殖医療は近年めざましい発達を遂げ、技術面はもちろん、治療を受けられる施設の数も588施設(2011年)と世界一になりました。その反面、患者さんへの「心のケア」という面ではまだまだ十分とは言えず、課題を抱えているのが現状です。

 

■ 不妊とうつ症状

自分が不妊だと知るのは本当に辛いことです。描いていた人生の青写真が崩れ、絶望的な気持ちになったと話す方も少なくありません。精神的な部分はもちろん、経済的、肉体的な負担も大きいことから、不妊治療が原因でうつ症状を引き起こすケースもあります。デリケートな治療にも関わらず、実際の治療現場では、心のケアを含めた対応が行き届いている施設はまだまだ多くはありません。

 

■ 晩婚化、晩産化と不妊

晩婚化の影響で、2011年には初産年齢がついに30歳を越えました。いまや4人に1人が高齢出産です。働く女性が増えたことも晩産に大きな影響を与えているようで、私がお会いした方の中にも、「キャリアを優先していたら妊娠を考える頃には35歳になっていた」「高齢出産は覚悟していたけれど、40歳くらいまでは普通に授かれると思っていた」などと話す方が少なくありません。晩産のリスクとして知っておきたいのが妊娠適齢期(※1)。意外かもしれませんが、20代後半から妊娠力はゆるやかに低下しはじめます。

 

■ 働く女性の不妊と心の葛藤

先ほどの例のように、「40歳くらいでも子どもは産めるはず」と考えている人は意外と多く、高齢で不妊治療をスタートさせた方の中には「こんなはずじゃなかった」と嘆く方も少なくありません。最近では、管理職として活躍する女性も少しずつ増え、男性と方を並べて頑張る女性の姿も多く見かけるようになりました。ハイキャリア女性ならではの心の葛藤と言えるかもしれません。

「キャリアを軸とした人生設計をしていたから、不妊治療はまさに想定外」、「仕事が安定したら“計画的”に子づくりしようと考えていたため、治療が必要と知ったいま、人生そのものへの不安と焦りが加速しています」という声もありました。

せっかく築いてきたキャリア。不妊治療と仕事の両立には周囲の理解も必要でまだまだハードルが高いのが現状です。NPO法人Fineの調査によると、働きながら不妊治療をする方の40%が、仕事との両立の難しさを理由に退職しています。スケジュール調整、職場での理解協力の仰ぎ方など、働きながら治療を進める上で必要になるこうした部分がストレスになることも多くあります。

 

治療を行う人それぞれの立場や状況に応じた心のケアが必要なことはもちろんですが、不妊治療に限らず、働きながら子どもを産み育てることそのものにもっと寛容な社会になるよう、願ってやみません。

[執筆:渡辺 さちこ]

 

【参考】

※1. 妊娠適齢期については「医療法人 浅田レディースクリニック」の解説を参考にした
※ 「不妊社会」- 難しい不妊治療と仕事の両立 – NHKオンライン
 NPO法人Fine 「不妊治療の経済的負担に関するアンケート」(2010年3月発表)