筆者の運営する事業は3年目に突入。経営者としてはヒヨコですが、ゼロから自分たちで立ち上げた“起業”であることから、会社員の方から「起業したいのだけど、踏み出せない。どうやって決断したらいいのか」と相談をされることがあります。悩んでいないでやってみたら? とは思うものの、筆者も会社員時代には「会社を辞めて起業する」ことへの不安がありましたから、踏み出すのに躊躇する気持ちは分かります。

 

■ 決断できない理由は何ですか?

起業を具体化するにあたって、事業がうまくいかなかったら? 借金を抱えることになったら? など、不安を感じるのは当然だと思います。まだ準備中で、必要なものが揃っていないという方もいらっしゃるでしょう。「万全な時なんて、いつになっても来ない。今やらずに、いつやるの!」などと筆者は無理強いするつもりはありません。何をするかはその方の人生だし、人ぞれぞれのタイミングがあります。

ただ、起業したい方のお話を聞いていて「踏み出せない理由」が「周囲が反対するから」の場合は、気になります。ご存知のように、周囲の声は必ずしも、本当にあなたのためを思っての意見とは限りませんよね。良し悪しにかかわらず、それぞれの立場からの意見にすぎないのですから……。

 

■ なぜ周囲に反対されると、気持ちが揺らいでしまうのか?

今回は、「なぜ周囲が反対するのか?」ではなく、「なぜ周囲に反対されることで、あなたは決断が難しくなるのか?」という点を考えたいと思います。

『白熱教室』にも登場した、行動経済学の第一人者であるダン・アリエリー教授によれば(※)、こんな研究結果があるそうです。被験者をMRIに入れて、特定の課題を解かせます。課題を解いているときに脳のどこが活性化するかを調べる実験ですが、さらに面白いことが分かりました。被験者は、自分の回答が他の全員とは違うと知らされた時、脳の感情を司る部分が活性化し、痛みに似た反応を示したというのです。ダン教授は、これを“激しい不快感の反応”と表現しています。

周囲と意見が異なることは、私たち人間の脳にとっては激しく不快なことなのです。周囲の人があなたの起業に反対した時、あなたの気持ちが揺れたのは、痛みのある不快な事象として脳が認識したから。この不快な状況を解消したい…、皆と意見をそろえたい…、だからやはり起業はやめたほうがいいのではないか…。本人が意識していなかったとしても、この流れが「周囲に反対されて決断できない」状況を生んでいるのかもしれません。

 

ではどうしたら、周囲の反対に心揺らがずに、自分のやりたいことを前に進められるでしょうか? ダン教授曰く、「人を同調の縛りから解放するには、ほかにも同調しない仲間が一人いれば十分だ」とのこと。つまり、あなたが起業することを肯定してくれる仲間が、周囲に少なくとも一人いることが大事なのです。そういえば、よく起業家インタビューなどを読んでいると「みんなが無理だと言ったけど、妻だけが(夫だけが/家族だけが)、私を信じて応援してくれた」というエピソードを見かける気がしませんか。

[執筆:菅野彩子, 2014年9月16日]

 

【参考】
ダン・アリエリー(2014)『お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学』早川書房