2016年3月、大阪市の中学校の校長が全校集会にて「女性にとって最も大切なことは、子どもを2人以上産むこと。仕事でキャリアを積むこと以上に価値がある」と発言したことが報道されました。更に、「人口が減るなかで、日本がなくならないためには女性が子どもを産むしかない。間違った発言とは思わない」と、朝日新聞の取材に応えており、更なる物議をかもしています。

 

■ 価値は自分で決めること

子どもを産むことはキャリア以上に価値がある、とのことですが、それは発言者の価値観。そう思うことは個々人の自由ですが、その価値観を他人に押し付けることはおかしな話です。価値観が多様化し、結婚、妊娠出産も自由に選択できる時代になった今、既存の画一的価値観を押し付けること、そしてそれを公の場で教育者の立場から述べること自体、筆者は違和感を覚えざるをえません。

 

■ 「日本のため」という大義は一見正論に見えますが……

日本がなくならないために女性が子供を産むしかない、とのことですが、日本のみならず、国は1人1人の個々人が集まって形成している集合体です。器ではありません。個々人の自由や行動を制限したり、罪悪感をもたせたり、生きづらい風潮のある国が繁栄するのでしょうか? 既に歴史が証明しているはずです。「国のため」という大義は一見正論に見えますが、実は矛盾に満ちた詭弁なのです。

 

■ 号令をかけるよりも環境を整える

世界には少子化から復活した国々があります。フランスやスゥエーデンでは、1980年代には当時の日本と同じくらいの水準にまで出生率が低下していましたが、経済的支援や保育サービス充実等の政策により、少子化から復活しています(※2)。政府が「産めよ増やせよ」と号令をかけるのではなく、産む環境を整えることで自然と出生率が上昇をしたのです。日本は成功している国々から学ぶことも多そうですね。

 

女性も男性も、それぞれの人生をそれぞれの信念の基づき精一杯に生きています。最近ではダイバーシティ(多様性)という言葉も広まってきました。これからの時代は、自分と違う価値観や意見を持つ人達を認めることも大切なスキルのひとつなのです。

[執筆:久保木 惠子(コーチ), 2016年5月28日]

 

【参考】
※1. 『朝日デジタル』「「子を産めない人は寄付を」「2人以上」発言の校長」2016年3月12日
※2. 『NHKスペシャル』「論客が考える超少子化」