■ 20代になって「抱っこ」と言うようになった娘

子供が小さなうちは「抱っこ」とせがまれたら、一般的には親は手をさしのべて抱っこしてあげるでしょう。けれども、「抱っこ」と言うのが20代の娘だったら……。

母娘関係改善カウンセラーの筆者のもとには、このようなご相談が持ち込まれることがあります。

すでに20代になっている娘が母親の顔を見ると、「抱っこして」と真顔で言ってくる。断ってもしつこくせがむ。母親自身、ほとほと困っているというのです。さすがに大人になった娘を膝の上に乗せるわけにもいかず、「何を言っているのよ」と冗談で受け止めていたそうですが、娘の顔は真剣そのもの。「お母さん、疲れているから」と断ると、娘はだんだん怒るようになったそうです。

こうしたケースについて、筆者は別段珍しいとは思いません。なぜなら、似たようなご相談を過去にも受けているからです。

 

■ 子供の頃の環境が影響する?

20代になって「抱っこ」を母親にせがむ娘の気持ちを、母親は理解できません。「何を今さら」と怒りに似た感情をもつ人もいれば、「自分の子だけど、正直気持ち悪い」と違和感を訴える人もいます。

このような娘さん達の子供の頃の様子を伺うと、非常に聞き分けがよく、子育てがとても楽だったと言う母親が多いです。その中の一人、A子さんのケースです。A子さんは幼い頃、1歳上の兄が病弱だったため、母親は看病で頻繁に家と病院を行き来していました。A子さんは学校から帰っても、また休日も、独りぼっちでいる事が多かったそうです。ですが文句も言わず、母親にとっては「なんて育てやすい子供だろう」と思っていたと言います。

 

■ 「赤ちゃん返り」だけが理由とは限らない

その後、社会人となったA子さんは、職場でいじめにあって登社拒否をするようになりました。自宅に1日中ひきこもるようになり、母親が外出先から帰宅すると「抱っこして」と言うようになったのです。最初は娘がふざけていると思ったのですが、何度もしつこく言ってくるため母親も感情的になり二人は大喧嘩に。

A子さんのようなケースでは、子供の頃に甘えられなかったから今、赤ちゃん返りしているという理由をつけるのは短絡的です。現在の状況から、A子さんが仕事について、または自分の人生に対して、大きな不安を抱えていることに焦点をあてた方がよいでしょう。娘さんを避ける前に、じっくり話を聞いてください。そのときにスキンシップを求めているなら、ハンドマッサージの名目で手をさするだけでもいいのです。娘さんが求めているのは心の安定なのですから。

[執筆:横山 真香(母娘関係改善カウンセラー), 2016年10月27日]