前編では脳が驚異的に発達する3歳までが、この後の頭の良し悪しをきめる重要な時期という話をしました。後編では、具体的にどのようなコトがこの時期の脳トレ―ニングのポイントなのかを掘り下げていきます。
■ どうやったら脳が活性されるの?
脳トレというと、すぐに知育DVDや玩具を思い浮かべるママもいるかもしれません。私もそのひとりでした。ところが、米ワシントン大学教授、パトリシア・クール博士の研究で興味深い実験結果が出ました(※)。英語ネイティブの家庭で育った赤ちゃんに、2つの方法で中国語をおしえて、中国語が聞きとれるかという実験です。ひとつはVTR(録画映像)、他方はVTRと全く同じ内容を直接対面で教えるというもの。
はたして結果はどうだったでしょうか?
意外なことに、VTRで学習した赤ちゃんは、全く学習しなかった赤ちゃんと聞き取りテストの結果が変わらなかったのです。集中してVTRを見ていたにもかかわらずです。一方、全く同じ内容を対面で学習した赤ちゃんは、高い聞き取り結果を出しました。この結果は、赤ちゃんが学習するには、人とのライブな関わりが必須であることを示しています。
■ 「やったらいいコト」より「やっちゃいけないコト」が重要!?
「じゃあ、何をしたらいいの?」というと、この時期の赤ちゃんには「やっちゃいけないコト」ことの方が実は多いのです。例えば、赤ちゃんに次々と知育玩具を与えること。飲み物をこぼしたり、失敗したりする前に手伝ってしまうこと。これらは赤ちゃんが興味を持つ前に与えることで、偶発的な発見の機会を奪い、コップを傾けたら中身がこぼれるという重力の概念を学ぶ機会を奪い、失敗を重ねて手先が器用になるためのトレーニングの機会を奪っていることになるのです。
3歳ぐらいまでの赤ちゃんの脳は、「五感で感じる力」が発達する重要な時期。地球にはじめて降り立った赤ちゃんが、初めて外界を探索して感じたこと、心が動いた体験を沢山積み上げさせてあげて、決して阻害しないことです。この豊かな経験を夜寝ているときに反復、整理していくことで、脳がどんどん育っていくのですから。赤ちゃんが気づく前に「ほら、てんとう虫がいるよ」とおしえてしまうのは、重大な脳の機会損失に他ならないのです。
そして、唯一この時期に絶対に「やるべきコト」は、赤ちゃんに対してたっぷりの愛情を注ぎ、「自分は愛されている」「自分はかけがいのない存在なのだ」という深い自己肯定感を根付かせること。この自己肯定感が低いと、精神的にもろく、ポジティブに考える力が弱い子供になってしまいます。しっかりと子供を抱きしめて、くどいぐらい「○○ちゃんはママの宝物」であることを伝える、子供の目線に下りて「どうしたの?」と子供の声に耳を傾ける、愛情表現豊かで聞き上手なママやパパになることが最高の脳トレなのです。
雨で外出がままならない梅雨時期だからこそ、我が子の心の声にじっくり耳をかたむける脳トレ、いかがでしょうか?
[執筆:マキコ・アサエダ(産後ライフプランナー)]
【参考】
※ポー・ブロンソン, アシュリー・メリーマン (2011) 『間違いだらけの子育て―子育ての常識を変える10の最新ルール』インターシフト