女性のキャリア継続にとってネックになりやすい結婚・妊娠・出産。筆者は企業のキャリア・デザインセミナーで講師を務めている関係で、就職・転職を希望する20代後半~30代女性の方々とお話する機会が多いのですが、ライフイベントとの間で悩んでいる方が少なくないように感じます。
そこで今回は、30代の既婚女性が陥りやすい「就活・転職か、妊活か」という究極の選択について迫ってみたいと思います。
■ 働き盛りは、妊娠・出産適齢期!
日本女性の労働環境は、M字カーブ(※1)に代表されるように、結婚や妊娠・出産といったライフイベントとキャリア形成期が重なっています。昨今は晩婚・晩産時代とあって「仕事もしたいけど、産みたいときにスムーズに授かれるか心配」という声もちらほら。妊娠も就職・転職も、ある程度 “適齢期” があるからこそ、身の置き方に悩むところです。
■ 妊娠は、自分を正しく知ることから
筆者が相談を受ける際に気をつけているのは、その方の年齢だけで判断しないこと。妊娠のしやすさは年齢に比例して低下しますが、個人差が大きいのも事実です。「35歳だから絶対に妊活最優先で」ということもなければ、「28歳だから今のうちに転職しちゃいましょう」ということもありません。
20代の方でも、AMH(※2)を調べてみたら卵子の在庫が少なく不妊治療できる期間も限られていると分かり妊活を優先した方がいますし、35歳以上でバリバリ働きながら自然妊娠している方もたくさんいらっしゃいます。いつか産みたいのであれば、まず、自分の身体をきちんと把握し(パートナーの検査もお忘れなく!)、自分たちの基準で判断してほしいと思います。
■ 会社を辞めない、正社員以外で働くという選択も視野に
赤ちゃんは授かり物。計画的にコントロールできないからこそ、近い将来の妊娠を希望していて在職中であれば、会社に迷惑にならない配慮をした上で「働き続ける」という選択肢もあるかもしれません。それでも何らかの理由で転職する必要があったり、既に離職中の場合は、あえて正社員以外の働き方を模索するのもいいかもしれません。
正社員である以上は、求められる成果も大きく、不妊治療が必要になった場合は特に両立が難しくなるケースも。また、正社員として転職したのに入社後すぐ妊娠してしまったのでは会社に損失を与えてしまいます。筆者は妊活とキャリアを両立するためにフリーランスという道を選択しましたが、パートタイムやアルバイトなど働き方を柔軟に選択し、キャリアをつないでいくことも大切だと思います。
就(転)活と妊活。働き盛りのアラサー女性にはなかなか難しい選択ですが、どうか自分の意思と軸を持って判断してほしいものです。自分の人生に責任を持てるのは自分しかいないのですから!
[執筆: 渡辺 さちこ(「妊きゃりプロジェクト」主宰)]
【参考】
※1. 日本では、出産を機に30代前後で仕事を辞めてしまう女性が多く、30代で一時的に労働力率が低くなっており、これをM字カーブといいます。
※2. アンチミューラリアンホルモン(抗ミュラー管ホルモン)検査。卵巣内にどのくらいの卵子が残っているか(卵巣予備能力)が分かることから不妊治療選択の目安などに使用されています。