「女性は日本の潜在力。働く女性を増やせば、日本経済がよくなる」。これはIMF(国際通貨基金)のトップ、クリスティーヌ・ラガルド専務理事の言葉です。昨年開かれた国際会議でラガルド氏は、他の先進国に比べてM字カーブや男女の賃金差が顕著な日本に対し、「女性の労働率を上げることが経済成長のカギ」と述べました。
アベノミクスの成長戦略でも重要視される女性の活用推進。そんな中、関心が高まってきているのが、 “働くお母さん”。先日都内で「ワーキングママ・フォーラム2013」が開催され、筆者も参加してきました。
■ 女性の「働く」が、もっと当たり前の世の中に
男女雇用機会均等法施行からもうすぐ30年。働く女性は増えたものの、出産を機に仕事を辞める人が未だ6割という日本。「これからは好むと好まざるとにかかわらず、働き続けることが当たり前の社会になります」。フォーラムの冒頭、基調講演を行った少子化ジャーナリストの白河桃子さんのお話にくぎづけになりました。「社会経済が大きく変わり、パートナーだけでは家族を養えない時代になってきている。貧困化はもう始まっているんです」。
その後のパネルディスカッションでも、「ライフイベントを経て長く働くということが、本人のキャリア形成はもちろん、社会・経済が成長するカギになるでしょう」とのお話が。“働く女性が多い国ほど出生率が高い”というデータもあるほど、女性の力は絶大。日本はようやくスタートラインに立ったところなのかもしれません。
■ 企業や社会の風土づくりはまだまだこれから!
ワーキングママを取り巻く環境はどうかというと、なかなか厳しいのが現実。仕事と育児の両立に苦心する人が多く、白河さん曰く、“どこか怒りを抱えている”のだとか。「妊娠したら一般職に配置換えさせられた」「マミー・トラック(※1)に乗せられてしまった」「夫が育児を手伝わない」…。悩むワーキングママと戦力の活用に苦戦する企業側。一方では整いすぎた制度にぶら下がる社員も出現し、事態はなかなか複雑に。女性の活用状況には企業差も大きく、社会全体でみるとまだこれからという印象を受けました。
■ ワーキングママを輝かせるのはイクメン!
企業vsワーキングママの構図は雑誌でも度々とりあげられるなど、最近注目の議論。パネルディスカッションでは、「ワーキングママだけが頑張ってもうまくいかない。男性の意識も変えていかなければ制度は使いこなせないし、社会が変わっていかない」という鋭い意見が。
NPO法人ファザーリング・ジャパン代表の吉田大樹氏は次のように話していました。「“女性の社会進出”という表現があっても“男性の社会進出”とは言わないですよね。同様に、“男性の育児参加”という表現はあっても“女性の育児参加”とは言わないんです」。既存の価値観の枠組みの中でしか議論できないと、矛盾が生まれやすくなります。女性がイキイキ働くためには、“男の育児” がもっとポピュラーになる必要がありそうです。男性が積極的に育児に関わることで女性が働きやすくなることはもちろん、イクメン家庭のほうが第二子が産まれやすいというデータ(※2)も。吉田氏曰く、今後はますます夫婦のパートナーシップが大切になってくるといいます。
女性の育児休暇取得率83.6%に対して男性はたった1.89%。女性の社会での活躍には男性の存在が欠かせませんね。
[執筆: 渡辺 さちこ(「妊きゃりプロジェクト」主宰 )
【参考】
※ 東京ワーキングママ大学「ワーキングママ・フォーラム2013」(2013年10月12日開催)登壇者は白河桃子氏、斎藤由希子氏、矢島洋子氏、吉田大樹氏、吉田穂波氏
※ 『東洋経済オンライン』「女性の労働参加促進で成長率は上がる」(2012年10月22日)
※1. 仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコースのこと
※2. 厚生労働省「21世紀出生児縦断調査2013」より