アベノミクスで声高に叫ばれ、女性の社会進出が全面的にバックアップされていく風潮にあるものの、いまだ「女性が働くこと」の当事者の事情や気持ちがないがしろにされているように思ってしまいます。「女性が働く」というコトの真の意義は、単に保育園確保やインカム増収だけではないのです。
■ やはり女性は損をしている?
おそらく多くの働く女性が少なからず似たような経験をしているのではないかと思いますが、筆者は女性に生まれたことで人生で2回ショックを受けたことがありました。
1回目は社会人になるとき。在学時代、女性だからという理由で不平等な扱いを受けたことは一度もありませんでした。それが、企業に入った途端、その差別や不公平はごく当たり前にあり、採用面接の時から「妊娠だけはしないでね」と念をおされたり、飲み会でお酌させられたり、一度は酔ったクライアントに抱きかかえられて大きな壺に入れられそうになったことも。
2回目は子供を産んだとき。実際に子供を産むまでは、無邪気に夫婦で育児や仕事を分担できるものと考えていました。しかし、実際には女性が育児の大半を担い、病気のとき駆けつけるのは大抵母親。結果的に重要な仕事はできないと会社も自分も判断し、責任の軽い仕事に異動。産前までかなりの情熱と時間を仕事に費やしていたが故に、非常に残念でなりませんでした。
■ イクメン・家事メンは女性を救うか?
女性を仕事から遠ざける大きな要因のひとつは「女は家庭、男は仕事」という一般的通念。その通念による被害者はなにも女性だけではありません。男性の方が手ひどいしっぺ返しをもらっている例は沢山あります。育児休暇を取得した男性が、不当な評価や部署異動などのトラブルが相次ぎ、労働局に寄せられた男性からの「育休に係る不利益な取り扱い」相談は倍増傾向だといいます(※1. 2012年)。
また現実問題として、厚生省の調査によると、男性の給与水準を100とした場合の女性の賃金水準は、一般労働で69.3、正社員でも72.1となっており、その格差は30ポイント前後もあります(※2. 2010年)。
つまり、男性が働いて女性が家庭を担っている方が、総じて家計に入る収入は高くなり、夫の仕事でのポジションに対するリスクも少ないと考えざるを得ないのが現状なのです。
沢山の家庭が、そのような結論を出したとすると、会社は在籍率の高い男性により投資するようになり、会社の女性の居場所はますます減っていくスパイラルに突入します。状況を放っておけばおくほど、女性の快適な社会進出から遠い社会ができあがっていくのです。
■ サンドバーグからのエール
そんな窮屈な社会で奮闘する女性にエールをおくるシェリル・サンドバーグ氏は、著書の中でそれでも「女性よ、大志を抱こう」と励まします。女性が内なる障壁(自分を過小評価する癖)を切り崩し、大志を抱くようになれば、要職につく女性が増え、彼女達がステレオタイプに縛られない企業や社会をつくり、快適な育児スタイルやパートナーとの関係性を構築し、最終的にジェンダー問題を解決していくのだと。
「仕事」と「家庭」は二者択一ではありません。娘を持つ筆者は、同じ女性として彼女が社会に出るとき、数多くの可能性と選択肢を用意しておいてやりたいと思う母心が、仕事を続ける最大の理由なのかもしれません。
[執筆:マキコ・アサエダ(産後ライフプランナー)]
【参考】
※1. 『日本経済新聞』2013年10月2日「父親の育休取得、トラブルが増加 不当評価・部署異動も」
※2. 厚生労働省「男女間の賃金格差解消にむけて」(2010年8月発表)
※ シェリル・サンドバーグ((2013)『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』