「協調性」は、応募書類の自己PRに多くみられる言葉。確かに、組織の一員として働くには、他の社員とうまく調和できる能力、すなわち協調性が大事です。ただ、他の社員と調和することだけに自分の関心が向き過ぎて、自分を苦しめているのでは…と感じられる方に、キャリア相談で出会います。
そうした方の根っこの気持ちは、相手を不快にさせたくない優しさ。その気持ちを、今までとはちょっと異なる方向に当てることを、キャリアコンサルタントの視点で提案します。
■ 与えられた仕事からはみ出す
日経ビジネス(※)に登場した女性社長は、国際霊柩送還ビジネスで起業。発端は、ママ友の紹介で何気なく始めた、葬儀の返礼品を渡すアルバイトだったとか。キビキビ働く葬儀社スタッフを目の当たりにし、見よう見まねで葬儀社のサポートをし始めたところ、2年後に正社員として誘いを受けるまでに。彼女の思いやりのある性格が会葬者や遺族に対して自然に発揮され、会社の目に留まったそうです。
■ 協調性のそもそも
ところで、もしも彼女が、周囲の同僚、あるいは仕事を紹介してくれたママ友の視線ばかりを気にしていたなら、現在の彼女はあったのでしょうか。たとえば、「紹介してくれた彼女より頑張っちゃいけない」とか「私の仕事は返礼品を渡すだけだから」という具合に。
きっと彼女は、協調性を大きく捉えることのできる人だったのでしょう。自分がうまく調和する相手は、同僚というごく少数の存在だけでなく、葬儀社のスタッフ、葬儀を依頼した遺族親族、故人に縁のある会葬者など、多数の存在をイメージできる人だったのではと。実はここに、そもそも協調性が組織で求められる理由があります。
その理由とは、人と調和しながら、結果(売上や経費削減、顧客の評価など)を出すこと。仲良しグループを作るためではありません。あなたの優しさゆえのはみ出し行動を、時には、この大きな方向に当ててみては。
勇気のいることですが、今の自分にOKと言える部分がきっと見つかります。
[執筆:五十嵐 ゆき(キャリアコンサルタント) ]
【参考】
※ 『日経ビジネス』2013年10月7日「旗手たちのアリア 遺体じゃない、人なんだ」日経BP社