3月は、退職や人事異動の挨拶で別れの季節。そんな中、筆者は10年ぶりに「寿(退社)です」と挨拶を受け、とても新鮮でした。ぜひ、お幸せに!
「寿」と聞いて新鮮に感じたのは、キャリア・カウンセラーの職業上、両立が難しいと退職を迷う方、退職した方のお話を伺うことが多いため。「結婚しても働くことが当たり前」と思い込んでいたのかもしれません。そこで、アラサー女子の結婚と仕事の願望と実際について、調べてみました。
■ 寿退社は2人に1人
厚生労働省による「21世紀成年者縦断調査」(※1)は、平成14年(第1回)に20~34歳だった男女、約18000人に対して、毎年調査し続けているもの。ここでは、平成22年(第9回)の回答内容を見てみます。
第1回調査時に独身で「結婚を機にやめる」と回答し、その後結婚、離職した女性は52.7%でした。
ちなみに寿退社とは、結婚に伴って退職することの俗語。これは、女性は結婚により仕事を辞めることが通例となっていた時代背景と、結婚が女性の幸せと、広く考えられていたことにより生まれた言葉だとか(※2)。言葉の誕生のいわれはともかく、嬉しい・祝いたい気持ちがあるときには、深く考えずに使いましょう。
ところで、「結婚後も仕事を続ける」と回答し、第1回調査以降に結婚した女性の79.5%は仕事を続けていました。こちらも初志貫徹、意思あるところに道は開けるのですね!
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結婚で仕事を辞めるつもりが…
前述の仕事を続けている女性のうち、結婚前と同じ仕事を続けている女性の割合は72.0%。さらに第1回調査時の雇用形態別の内訳を見ると、正規雇用だった方は81.6が%、非正規雇用だった方は57.3%が、結婚前と同じ仕事を続けています。
一方、「結婚を機にやめる」と回答した女性が、結婚しても結婚前と同じ仕事を続けている割合は、31.8%。同様に、第1回調査時の雇用形態別の内訳を見ると、正規雇用だったの方は32.6%、非正規雇用だった方は27.9%が、結婚前と同じ仕事を続けていました。
注目したいのは後者。寿退社のつもりだったのに働き続ける女性が3割もいて、雇用形態の違いによる差が大きくない、ということです。そういえば、4月4日の『日本経済新聞』(※3)は、某メガバンクが優秀な人材をつなぎ止めるために、契約社員の待遇改善を検討する旨を報じました。
辞められない事情があるにせよ、辞める必要がないと気づいたにせよ、“正社員じゃなきゃ、結婚後も仕事を続けられない”と最初から諦める必要はなさそうです。
[執筆:五十嵐 ゆき(キャリアコンサルタント)]
【参考】
※1. 厚生労働省, 第9回「21世紀成年者縦断調査」平成24年3月21日 PDF
※2. 『日本語俗語辞書』より
※3. 『日本経済新聞』「契約社員7000人、組合員に 三菱UFJ 待遇を改善」2014年4月4日朝刊