■ 子育てと仕事の両立をする上で、一番大切なことは夫婦の役割分担ではない
この春、復職をした方はそろそろ、仕事と子育ての両立のハードルの高さに疲れる頃ですよね。この両立ファーストステージでつまづく壁の一つに、復職前と変わらず家事・育児の多くを妻が担っているという状況が多いのではないでしょうか?
復職する前に家事・育児の分担を夫と相談しなかった、あるいは夫が長時間労働で、家のことに関わることが物理的に無理、というご家庭も多いと思います。
しかし、本質的なことを言えば、子育てと仕事を両立をする上で一番大切なことは、「家事・育児の分担」ではありません。
実は第一子の産後〜復職は夫婦の最大の「転機」であり、正念場です。「親」という人生における新しい役割を引き受け、価値観が変化した女性にとって、慣れない育児をしながら、生産性の高い仕事をすることに適応するのは、それまでの人生で一番大変といってよいくらいの転機です。
その妻の転機は、夫婦の転機でもあります。それを夫が認識し、一緒に立ち向かおうとしているかで、その後の夫婦人生が変わってきます。
■ 夫婦で転機の対処について話し合い理解し、納得し合っているか
この「転機」がもたらす変化の乗り越え方について、米国のキャリア理論の大家 シュロスバーグ氏は以下の3つのステップを用意しています。
(1) 転機であるということの認識をする
(2) 転機を克服するためのリソース(資源)を点検する
(3) 受け止め、戦略を立て対処する
シュロスバーグの3つのステップをもとに考えるのであれば、まず、(1)夫婦で転機について認識し、(2)その転機を克服し、適応する力をつけるために自分たちの持っているものだけでなく、他人の力を借りれるかリソースを点検する、探す、(3)現実を受け止めながら、今までと違った最適な方法をみつけてその時々のベターを模索する、ということになるでしょう。
実はこの出産後を夫婦の転機だと認識せず、夫側が共に乗り越えようという意識がなければ、妻の夫への愛情が低下する、さらには熟年離婚の温床になってしまう……ということが、東レ経営研究所のワークライフバランス研究部長の渥美由喜氏のデータ「女性の愛情曲線」でも実証されています。
夫婦関係の役割が固定化・定着化してしまうと、修正に倍の労力がかかります。ですから、夫と共に幸せな両立の生活を送りたいのであれば、妻の気持ちを伝えて、夫婦で転機に立ち向かうために夫にも覚悟を決めてもらうしかないでしょう。ぜひ、この復職という転機を二人で乗り切ることで、新たな夫婦関係を構築する幸せの第一歩にしてほしいと思います。
[執筆:小倉 環(キャリアカウンセラー) ]