内閣府による最新の発表(※1)によると、女性の第一子出産年齢は30.3歳と前年から0.2歳上がり、過去最高になりました。晩産化が進むにつれ、不妊治療の需要も増え、年間約3万2千人が生殖医療によって誕生しています。いまや不妊は国民病ともいわれていますが、治療をしたからといって全ての夫婦が子どもを授かるわけではないのが辛いところ。
今回は、筆者が不妊についての相談を受けるなかで最も多い「治療のやめどき」に悩む声に注目し、生き方そのものについて考えていきたいと思います。
■ 始める以上に、やめることが難しい不妊治療
不妊治療のやめ時・あきらめ時に悩んでいる35歳のAさんは、2回の人工授精を経て体外受精にステップアップしました。3回目の体外受精が残念な結果に終わってから、治療をやめるかどうかを真剣に考えるようになったといいます。「不妊治療の辛いところは、治療のペースと心がうまく噛み合わないところ。よくジェットコースターに例えられるけれど、妊娠への期待と失敗した時の落胆というアップダウンは、精神衛生上、本当によくないですよね…」。
40歳のBさんも「この年齢での妊娠率はわずか7%だとわかっていても、ひょっとしたら次の周期にはうまくいって、その7%に入れるかもしれない」と期待してしまい、踏ん切りがつかないままズルズルと治療を続けていると話します。
■ 妊娠=ゴールではないから…
筆者も身をもって実感しましたが、長いこと不妊治療をしているとだんだんと妊娠がゴールに思えてきます。けれど、妊娠し出産を目前に控えた今、ひしひしと感じるのは、妊娠も出産も、長い子育てのスタートでしかないということ。
治療のやめ時に悩んだら、下記のポイントをふまえてライフプランニングをしてみてはいかがでしょうか?
- 経済面・・・働ける期間からの逆算
治療を続けると費用が嵩んできますよね。両親などから一時的に借り入れるなどして治療費を工面している方もいますが、経済的にも一番大事なのは出産してからの養育費。自分たちが働き、稼げる時間とのバランスを考えながら考えたいところです。
- 精神面・・・幸せの価値観
治療を続けるにしても、やめるにしても、他人のものさしではなく自分たちの基準で人生を捉え、幸せな生き方を探したいものです。前出のBさんは、自分とパートナーの残りの人生を笑顔で過ごすことを第一に考え、不妊治療を卒業する選択をされました。「子どもと接することは好きだから、気持ちを切り替えて保育所でのお仕事を探すことにしました!」不妊治療の経験が人生の新たな転機になった瞬間です。
医療の進歩によって子どもをもつためのチャンスと選択肢が増えた今、反面、こうした“無限の選択肢”が、かえって人を苦しめている現状は確かにあります。けれど、どんな人生を送りたいのか…決めるのは自分。何かと辛い治療ですが、考える時間ができた、とプラスに変換したいものです。
[執筆:渡辺さちこ(「妊きゃりプロジェクト」主宰)]
【参考】
※1 .2014年版「少子化社会対策白書」
※ 『日本経済新聞』2014年6月26日「少子化ニッポンは不妊大国」