■ 肩を叩かれただけで、体が緊張する時には
友人とのハイタッチや、職場で「お疲れさま」と肩を叩かれたりすると、ギョッとして身体がこわばる、緊張して背中が汗ばんでいる。そんな体験はありませんか?
他人に身体を触れられることで極端に反応してしまうようなケースでは、幼い頃に、親子の接触が低かったことと関連があるという説があります。春木豊氏の著書『動きが心をつくる~身体心理学への招待』(※)によれば、大学生を対象とした対人接触に関する実験で、次のような結果が得られたそうです。
幼児期における両親との接触の程度が高い人は、接触に対して、親しみの感じと励ましの感じをより強く感じており、程度の低い人は緊張感をより高く感じていた。
当前のことながら、身体の動きと心は密接なつながりがあります。
■ 母親に抱きしめてもらった記憶がない
母娘問題カウンセリングを行っている筆者のところに来られたクライアントのA子さんは、子供の頃、母親に抱きしめてもらった記憶がほとんどない、と言います。
物心ついたときから両親はいつも喧嘩ばかり。A子さんが保育園に通っていた頃に、父親は家を出て行きました。母子二人だけの生活が始まりましたが、1日中働きづめの母親はいつも疲れており、A子さんをかまう余裕はなくほとんど放任状態でした。
学生時代に友人がふざけて抱きついてきたときも、A子さんはどのように対応していいかわからず、むしろ嫌悪感がありました。社会人になって恋人ができましたが、腕を取られるだけで委縮してしまいます。その一方で、「私のこと、嫌いにならないかな」という不安ばかりが募り、彼が発した言葉やメールの文章が気になるように。
このままではいけないと筆者のカウンセリングに来られたのですが、話しているうちに思い出したのは、幼少時、座っている母親の背中に抱きつこうとしたら、「やめて!」と手を払いのけられたことでした。
母親の温もりを求めていたのに拒絶された思いが、今も強く残り、それが対人接触と、嫌われたり見捨てられるかもしれない恐れにつながっていたのです。
過大な緊張感は、心や体を固くさせてしまう傾向があります。そこで、たとえば心と身体にアプローチするアロママッサージなどを継続して受けることで、タッチングに対する抵抗感を抑えられるようになります。また、心も頑なになっていることが考えられるため、コミュニケーションを円滑するためのワークショップやカウンセリングなどを受けてみてはいかがでしょうか。
[執筆:真香(母娘問題カウンセラー)]
【参考】
※春木豊(2011)『動きが心をつくる~身体心理学への招待』 (講談社現代新書) 講談社 PP.147 より引用