■ 幸せいっぱいの花嫁に、心配の種をまく母親の存在
秋は結婚式シーズン。花嫁にとっては幸せ絶頂のこの時期、喜びに浸りたい気分に水をさすのが母親の存在。主役であるはずの花嫁が、浮かない顔の母親を気にするのは、「自分が家を出たら両親はうまくやっていけるだろうか」という心配があるからです。
“空の巣症候群”という言葉をご存知でしょうか? 子供が独り立ちして家を出ることにより、母親の気持ちが落ち込み、悪くするとうつの状態になることもあります。それまで、子供の世話をあれこれしてきたのに、気がつけば夫と二人だけの生活になります。仕事で忙しい夫は帰りも遅く、会話は途切れがち。そうでなくても、二人の仲が良好といえないなら関係はより冷めたものに。こうして不満を募らせた母親は結婚した娘のところへ、愚痴を聞いてもらいに行くのです。さらに夫が定年退職して家にいるようなら、夫と一緒にいるのを避けるため娘の家をセカンドハウスとして利用するようになります。
■ 空の巣症候群の母親をサポートする
空の巣症候群については、一般的な更年期女性のストレス要因に関する調査でも、その一つに挙げられています。さらに、主なストレス因子として「夫に関する事項」というのが26.9%ありました。ちなみにこの調査では、現代社会特有の更年期女性のストレス要因として、「少子化により一人っ子への愛情が強く、子離れできない更年期女性が増加する」ことも指摘されています(※1)。
空の巣症候群のケースでは、母親の状態が娘の新婚家庭にまで影響を及ぼすことがあります。母親の単なる愚痴で終わればいいのですが、更年期障害も重なり、うつといった深刻な状況にまで発展することも。そもそも母親の抱える心の悩みを娘が解決するには、限界があります。母親自身が、自分の問題に気づく必要があるのです。
空の巣症候群が疑われる場合、例えばいきなり心療内科に行こうといっても母親は拒否するかもしれません。こういうときはまず父親と話し、さらに母親の姉妹や友人など頼れる人に相談してみる、あるいはカウンセリングを勧めてみましょう。もし母親がカウンセリングに抵抗を示すようなら、「私も一緒に受けてみたい」と提案してみてはいかがでしょうか。本来は、父親と母親が二人で問題に向き合うべきですが、それが望めそうにないなら、第三者の力を借りるのが有効なときもあるのです。
[執筆:真香(母娘関係改善カウンセラー)]
【参考】
※1. 大阪医科大学 産婦人科助教授 後山尚久『日産婦誌53巻9号』「レクチャーシリーズ 2女性の健康管理と心身症」PDF
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