夫婦問題カウンセリングを行う筆者に寄せられる悩みで、最近目立っているのが、若年世代(おもに20代後半から30代前半)の、「夫婦喧嘩が毎日のようにある」「口喧嘩が激しくて止まらない」「喧嘩がどんどんエスカレートしてしまう」といった内容。
よくよく聞いてみると、些細なことが原因となっているケースがほとんど。言い争いがエスカレートし、相手を懲らしめるため、相手に勝つための喧嘩に発展。売り言葉に買い言葉となり、「言葉」が「言刃」となって、鬼の形相に変身していきます。次第に後に引けなくなり、「もう離婚だっ!」と心にもない言葉を投げつけてしまうことも。こうなるとますます収拾がつかなくなります。
■ 話し合いの目的は、相手を懲らしめるため!?
ですが、本心はどうでしょう。決して、相手を懲らしめたいわけではないのでは?
「夫婦仲良くしたい」「優しくしたいし、優しくされたい」のが本音ではないでしょうか。よりよい結婚生活を送るため、異なるふたりの考えや意見をどのように調整するか。どう折り合いをつけていくか、その方法を見出すために話し合いを始めたはず。決して「離婚」を目的に話し合ったわけではないはずです。
最初に望んでいた方向とは、反対の方向に進んでしまっていませんか。なんだか口調がきつくなってきたな、と感じたら、まずはひと休みを。話すのをいったん止めて、大きく息を吸って深呼吸してみましょう。ちょっと頭を冷やして、「何の目的で話し合っているのか」、今一度振り返ってみてください。
■ 男女の脳の違いを知り、客観視する習慣を
筆者のカウンセリングでは、長期的・俯瞰的・客観的な視点で行っていますが、夫婦の話し合いにも、そんな視点を取り入れてみるのがポイント。
(1) 男女の脳の違いを知る
(2)本来の目的は何か考える
(3)自分たちを客観視する
この3つを意識して習慣づけることで、夫婦喧嘩の回数はぐんと減ります。
特に「男女の脳の違いを知る」のは効果的。脳科学の研究者、黒川伊保子さんの著書『夫婦脳』(※)にも、「男性は結論や結果を重視し、女性は過程(プロセス)を大事にして、会話を楽しむ傾向にある」など、興味深いことが書かれています。
男性と女性は入れ替わることはできないので、お互いを完全に理解することはできませんが、「男女の性差」を知っておくだけでも違います。少なくとも、疲労感だけが残る無駄な喧嘩をしなくてすみますよ。
[執筆:渡辺 里佳(夫婦関係・離婚カウンセラー)]
【参考】
※ 黒川伊保子 (2010)『夫婦脳―夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか』新潮文庫
※ 写真:Andriy Popov /123RF.COM、本文とは関係ありません