2016年3月卒業する大学生・大学院生への新卒採用選考が、いよいよ8月1日より解禁されました。経団連の指針により、昨年までより4か月後ろ倒しされたことに伴うものですが、経団連に加盟していない中小企業を中心に、すでに内定を出しているところも。内定を出している中小企業は「大手に内定者をとられるのでは」、大手側も「すでに内定を出している企業があるから、例年より応募者が少ない」と、双方ともに「オーガストブルー」に陥っているとされています。
■ 8月まで待てないと、内定取り消しをチラつかせてきた…
カウンセラーであり、人事労務コンサルタントでもある筆者のもとにも、「大手の選考が始まる8月1日までに内定承諾の書類を出さないと、内定を取り消すと言われた」といった相談がきかれるようになりました。就職活動終われハラスメント、通称「オワハラ」です。中には内定承諾の条件として、他社の選考をその場で断るように求める企業まで出てきているといいます。
■
内定承諾自体には法的拘束力はない
「内定承諾したら、就職活動を終わりにしなければならないのか」という質問をよく受けますが、内定承諾にはそのような拘束力はありません。また、入社承諾書などの書類を提出し多場合でも、憲法で認められている「職業選択の自由」および労働基準法で定められている「強制労働の禁止」より、企業が入社強制することはできないと考えられます。
■
プレ社会人として、節度ある行動を
どうしても内定承諾を1社に絞れず、かつ内定承諾までの期間を短く設定されてしまっている場合は、期限を延ばしてもらえないか交渉してみることもひとつでしょう。それでもうまくいかなければ、企業側は新卒採用に当たって多くの人員と時間とお金を使っていることを意識したうえで、できるだけ早めに、誠意を持った対応が必要です。辞退を伝える際は口頭や電話では避け、万が一の際の記録としても残せる手紙やEメールなどで連絡することが望ましいです。
■
万一のための自己防衛
企業の中には、内定承諾後に会社側が購入した備品類や研修費用などに対し、損害賠償を請求するところも。実際に認められる可能性は低いとはいえ、内定辞退の拒否や損害賠償請求をされた場合は、速やかに専門家に相談を。東京都の『TOKYOはたらくネット』(※)でも、就活必携労働法として資料をPDFで提供していますので、目を通しておくとよいでしょう。
[執筆:浅賀 桃子(メンタル心理・キャリアカウンセラー)]
【参考】
※TOKYOはたらくネット「就活必携労働法‐知っておきたい法律と相談窓口」