企業のメンタルヘルス予防では、働く個々人が自らのストレス状態に早く気づき、ストレス解消法を行う、医療受診をするなどの早い対処が大切だと言われています。同時に、管理職が部下のメンタルヘルス不調に少しでも早く気づくことも重要なのです。
筆者は、部下がいつもと違う状態に気づき、どう対応したらよいかという管理職の方の相談に乗ることもあります。その中でいつも感じるのは、管理職は医師や心理カウンセラーになる必要はないということ。どういうことなのか詳しく説明いたしますね。
■ 管理職は医師やカウンセラーになる必要はない
例えば、管理職のあなたが、最近、部下が元気のない様子に気づいていたとします。朝は挨拶もなく席に座り、眠そうな顔をしています。以前のように会議で発言することも少なくなり、仕事でもケアレスミスが続きました。
そんな部下に対して、「うつ状態なのではないか?」などと決めつけていませんか。そして、どうしてそうなってしまったのかという原因探しをしてしまっていませんか。確かにいつもと違う状態であったとしても、それがうつ状態なのかどうかは医師が診断すること。原因探しも、長時間労働が続いたとか、
環境が大きく変わったとか、職場環境に関することでしたらまだしも、プライベートなことがきっかけになっていることもあります。そんな時、部下に根掘り葉掘り聞くわけにもいきません。
■ 職場で起きている客観的事実にのみ対応する
ではどう対応したらいいのでしょうか? それは、業務上にどんな支障が出ているのかという点において関わっていくということなのです。
例えば、眠そうでケアレスミスも続いているのであれば、部下を呼んで話を聴いてみてください。目に見えてわかる客観的な事実にのみ対応すればよいのです。うつ状態なのでは? と相手に伝える必要はありません。今どんなことが起きているのか、何に困っているのかを傾聴していくのです。その上で、管理職として出来ることや問題解決のためのアドバイスなどをすればよいのです。それは普段のマネジメントとしての対応とそう変わらないはず。専門家がすべき対応と管理職としてあなたがすべき対応の役割分担が必要なのです。
[執筆:高橋 雅美(心理カウンセラー)]
※写真:monzenmachi / PIXTA(ピクスタ)、本文とは関係ありません