顔が見えない電話でのご相談をお受けする時に筆者が気を付けているのが、相手のペースに合わせるということ。実はこれ、相手をより深く理解する際の「傾聴」に大変意味があることなのです。
■ 相手のペースに合わせる
「傾聴」というと、相手の話を遮らず、うなづきや相槌、内容を繰り返すことの重要性を真っ先に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もちろん、そのような姿勢で話をお聞きするのは大変重要なことです。
ですが、その前に非言語コミュニケーションを取ることも大切なのです。非言語コミュニケーションとは、相手の声の調子、テンポ、呼吸などに合わせること。電話ではなく実際に会って話ができる場合は、相手の表情や姿勢、視線などのことです。
■ ペース合わせで安心感を与えて信頼関係を作ろう
相手がゆっくりと言葉を選びながら話しているのに、こちらが「早く言って!」と言わんばかりの無言の圧力で相手を見る、早口で言うなどはもってのほか。また、自信が無さそうにボソボソと話しかけてくる部下に対して、大きな声で「聞こえないよ?」というのも威圧的で上から目線と捉えられてしまう危険性もあります。
相手がゆっくり話すのなら、こちらもじっと我慢。自信が無さそうに話すなら、こちらもやや声のボリュームを落として言葉を返す。実はそんな中で相手は安心して話すことができるので、そこで本音を話してくれるでしょう。そのようなやりとりの中で、初めて信頼感が生まれるのです。
このペース合わせは、ビジネスの中で実行するにはよほど意識して取り掛かる必要があると思います。もちろんビジネス場面でいつも「傾聴」が必要とは限りません。アドバイスが必要な時も、指示命令が必要な時もあるでしょう。
ですが、もしあなたの部下が「実は折り入ってご相談があります」などと、真面目でやや深刻そうな表情で話しかけてきたような時は、「傾聴」する姿勢が求められます。そして、意識的に相手のペースにあわせて見ることもぜひ実践してみてください。
[執筆:高橋 雅美(心理カウンセラー)]