離婚の際には、子どもやお金に関する決め事について離婚協議書といった書面を、さらにできればそれらについて公正証書を作成しておいた方がよいと言われています。ですが、それらを作成しなければ離婚できないわけではなく、実際には、何も作成しないまま離婚してしまう夫婦も少なくないのが実情です。それでも専門家達が口を酸っぱくして作成を勧めるのはどうしてなのでしょうか。
■ 協議書は証拠を残すため
まず、離婚協議書とは離婚の際に親権や養育費、面会交流といった子どもに関する決め事や、財産分与や慰謝料といったお金に関する決め事を記し、夫婦それぞれが署名・捺印した書面をいいます。
これは後から、言った言わないの争いを防ぐため、離婚の際にそのような約束をしたという証拠を残すことに意味があります。
■ 公正証書は夫婦プラス公証人の3人で
次に、これらの決め事を公正証書にするメリットをご紹介するために、公正証書はどのようにして作成されるのかを先に説明します。公正証書は基本的には、夫婦ふたりと公務員である公証人の計3人が作成に関わることになります。実際に作成をするのは公証役場の公証人ですが、夫婦ともにその面前で決め事の内容をひとつひとつ確認し、書面に署名・捺印をします。
そして、作成された正本と謄本はそれぞれ妻と夫に渡されますが原本は公証役場で保存されるので、当事者には紛失の心配がありません。
また、公証人という法律の専門家である公務員の面前でひとつひとつ内容を確認するといったプロセスを踏むことから証拠としても強い力を持つことになります。
■ 公正証書には強制執行認諾約款を忘れずに
さらに、お金の決め事については、その公正証書に強制執行認諾約款をつけておくと、それが約束通りに実現されなかった場合には、改めて裁判というプロセスを踏むことなく強制執行をかけることができるようになります。夫がきちんとした勤め先から毎月給料を受け取っている場合には、養育費などが滞った際などに有効な対抗手段になりますので、忘れずにつけておきたいものです。
公正証書を作成するためには、公証人に支払う手数料など費用もかかりますが、作成するメリットが費用を上回る場合にはぜひとも作成しておくべきといえます。相手と一緒に作成におもむくのが嫌な場合には代理人を立てることもできます。自分達の場合には、どうするのが一番適しているのか迷った場合には専門家に相談をしてみてくださいね。
[執筆:糸瀬 彩湖(行政書士/夫婦カウンセラー)]
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