行き帰りの通勤電車の中で、ビジネスパーソンが気持ちよさそうに寝ている姿がよく見られます。忙しく家に帰る時間が遅くなり、睡眠時間が足りていないからと、通勤時間の30分~1時間を睡眠時間に充てているという方の声も少なくありません。今回は、この「睡眠不足」についてとりあげます。
■ 睡眠の質の状況
厚生労働省の調査にて、20歳以上の男女に睡眠の質の状況を尋ねた結果によると「日中、眠気を感じた」との回答が男性37.7%、女性43.0%という結果でした。また、「睡眠時間が足りなかった」との回答も、30歳代男性および20歳代・40歳代女性で4割以上、30歳代女性でも36.6%という結果となっています(※1)。
いわゆる働き盛りの30・40歳代を中心に、男女ともに睡眠不足の傾向が顕著であることが分かります。
■ 睡眠は「寝た時間の合計」だけでは測れない
「睡眠」には眠ってから3時間以内に出るとされる「徐波睡眠」と呼ばれる深い睡眠と、そのあとに現れる「浅睡眠」とに分けられますが、脳や体の疲れをとるためには徐波睡眠と浅睡眠、両方の睡眠を確保する必要があります。つまり睡眠時間が4時間程度の方の場合、徐波睡眠はとれていても、浅睡眠が足りないために、疲労回復が不十分なまま次の日をむかえることになってしまうのです。
そして、例えば「夜4時間、朝の通勤時間で1時間、帰りの通勤時間で1時間」という形で合計6時間確保できたとしても、浅睡眠はどこにも現れないことになります。
■ どうしても仮眠が必要な時は…
上記より、睡眠時間は夜にまとまった時間を確保することが大切です。どうしても忙しくて夜に時間が確保できないけれど、昼眠くて仕方がない……という場合は、仮眠もやむなしでしょう。その際に、効率よく仮眠をとる方法をご紹介しましょう。
・仮眠時間は30分以内に! 15分~20分くらいがベスト
先述の徐波睡眠は、眠り始めてから30分ほどで現れるため、30分以上寝てしまうと途中で起きて仕事に戻ることができなくなる可能性が高くなります。さらに、肝心な夜に眠りにつけなくなる恐れも。15分~20分くらいがベストでしょう。
・仮眠はできる限り早い時間に
同じく肝心な夜の眠りへの影響を最小限に留めるためには、仮眠をとる時間も注意が必要です。午前中に仮眠した場合は、夜の眠りへの影響はほとんどなかったとのこと。一方14時以降の仮眠では「徐波睡眠」の量が半分~3分の2程度に落ち込んでしまうとのデータがあります(※2)。
いかがでしたか? 長すぎる昼寝、帰りの通勤時間での仮眠は、夜の睡眠に影響が大きいことが分かります。どうしても夜の睡眠時間を確保できない方は、正しい仮眠をとり、睡眠の質を維持してくださいね。
[執筆:浅賀 桃子(メンタル心理・キャリアカウンセラー)]
【参考】
※1. 厚生労働省「平成25年国民健康栄養調査 結果の概要」pp.14
※2. 宮下彰夫・市原 信・宮内 哲・石原金由・新美 良純 「夜間睡眠に及ぼす昼間睡眠の影響」脳波と筋電図, 6, 183-191, 1978
※写真:わたなべ りょう / PIXTA、本文とは関係ありません