『マイナビウーマン』に2017年1月25日に掲載された記事「意味わかんない!『社会人としてありえない』有休取得の理由7つ!」が、法的趣旨を誤解させる表現があり、内容が不適切と判断したとの理由により削除に至るなど話題を呼びました。本件を踏まえ、改めて有給休暇の取得について考えたいと思います。
■ 有給休暇の法的趣旨とは
有給休暇の趣旨については労働基準法に規定があり、「労働者の心身の疲労を回復させることや、ゆとりある生活のために」賃金を払いながら労働を免除するというものです。その結果、労働時のパフォーマンス維持や向上につながってほしいという会社側の思惑もあるわけです。
さて、有給休暇の取得を労働者が請求する際に、理由を伝える義務はありません。これは、通常の休日に何をするかを報告する必要がないのと同じです。会社によっては、申請時に理由を聞かれたり申請書に記載が必要だったりするケースもあると思いますが、基本的に「私用のため」で問題ありません。
今回話題を集めた先述の記事では、「寝坊したから」「やる気が出ないから」「天気が悪いから」などの理由で(急遽)休みを申請することについて“ありえない”と紹介されていました。これに対し、「本来理由を伝える義務はないのだから、(仮に記事で紹介されたような理由であっても)問題はないはずだ」ということで、多くの反応がみられたのでしょう。
■ 権利だけを声高に主張しても、働きづらくなる
理由を伝える義務がない以上、当日の天気が悪いという理由であっても問題ないことになります。そして、その理由を「正直に」伝える義務もありません。
一方で、有給休暇は「事前申請が原則」であることも忘れてはなりません。会社には有給休暇の「時季変更権」が認められており、状況によってはとる日にちを変更するように指示されるケースもあります。先述の記事で紹介されているような「突発的な理由での当日有給休暇申請」を認めるかについては会社の裁量によるところが大きく、認めなくても問題はないのです。
「有給休暇取得には理由はいらないのだから、当日だろうと寝坊だろうと堂々と休めるはずだ」というような考えでは、会社内での人間関係を悪化させ働きづらくなる可能性があることも頭に入れた行動が必要なのではないでしょうか。労働者の権利だけを声高に主張していては、気持ちよく働き続けるのは難しいものです。
[執筆:浅賀 桃子(メンタル心理・キャリアカウンセラー)]
※写真:PIXTA、本文とは関係ありません