会った人の顔と名前が一致しない。最近、勉強したことをすぐ忘れる。歳のせい? あるいは自分は記憶力が悪いから仕方ない…、そんなふうに思っていませんか?
だとしたら、もったいない。今日は、記憶力を高める「より良い睡眠」についてご紹介します。
■ 「ノンレム睡眠」には段階がある
睡眠には、脳は覚醒状態に近い「レム睡眠」と、脳も体も休んでいる「ノンレム睡眠」があることはご存知ですよね。近年さらに睡眠の質の解明が進み、「ノンレム睡眠」のなかでも眠りの深さによって1~4の段階に分けられ、睡眠と記憶のメカニズムを明らかにする研究が行われています(※)。
■ “深い眠り”で得られる記憶力
ゆるやかな脳波を描く熟睡状態のときは、眠りの深さは3~4となり「徐派睡眠」と呼ばれます。
2013年1月、カリフォルニア州立大学の研究チームは、平均21歳と平均75歳の2グループを対象に、言葉を覚えてもらう実験を行いました。結果は、年齢によらず、前日に「徐派睡眠」を長くとった被験者のほうが多くの「言葉」を覚えていたそうです。
■ 香りを使って効果を高める方法も!
ドイツのリューベック大学の睡眠学者ビヨン・ラッシェル氏の実験によれば、「覚える」行動をしていた時に嗅いだ香りを、「徐派睡眠」の時にも嗅がせるようにすると、記憶力がアップすることが判明。
実験では、裏返したトランプをめくってそれと対になるトランプの場所を当てるというゲームを繰り返し、被験者に全部のカードの場所を覚えてもらいます。その時、ゲーム中にはバラの香りを部屋に漂わせます。その夜、被験者が眠っている時にもバラの香りを嗅がせるのですが、レム睡眠時に嗅がせたグループよりも、徐派睡眠時に嗅がせた被験者グループのほうがカードの位置を覚えていたのだそうです。
■ 計画的な「うたた寝」のススメ
この記憶力アップに効きそうな「徐派睡眠」。実は夜のぐっすり熟睡タイムだけではなく、「うたた寝」でも「徐派睡眠」をとることができます。
睡眠は人間の身体に刻まれた24時間リズムに影響されているため、午後から晩にかけては「徐派睡眠」が得られることが多いのだとか。例えば、特定の香りを漂わせた部屋で、午後の遅い時間に英単語を集中的に勉強し、すぐに寝て「徐派睡眠」をとるとか。
こうして見てみると、記憶が苦手…という状態は年齢や得手不得手の問題だけではないのかも。たかが眠りと思わず、ちょっとした時間の使い方・睡眠の取り入れ方で、記憶力アップにつながるなら、計画的な「徐派睡眠」を試してみたくなりませんか?
[執筆:嘉納夢子]
【参考】
※ 『COURRiER Japon (クーリエ ジャポン)』2014年02月号「頭を良くしたい人のための正しい「睡眠計画」」pp42-pp45 (文中の研究結果はすべてこの記事を参照)