パーソナルスペース(※)という言葉をご存知ですか? コミュニケーションをとる相手が自分に近づくことを許せる、自分の周囲の空間や心理的な縄張りを指します。日常では、満員電車で他人と密着する時の落ち着かない気持ちや、ここまでは近づいて欲しくないなどの自分のテリトリーや境界線のことです。
パーソナルスペースは、いわば自分と人との距離感をはかる心のスケール。これを上手く扱うことで人間関係やコミュニケーションに効果を発揮します。大切な人の気持ちが解りづらいという方にも、パーソナルスペースによってより良い関係性を創る方法をお伝えします。
■ パーソナルスペースで解ること
パーソナルスペースは自分を起点に、一定距離までは近づくことが出来る心の距離範囲です。親しい男女が並んで歩く時は、互いの距離は手が触れ合うほどの約45cmにまで近づき、パーソナルスペースが重なる部分も。好ましい相手ほど距離も縮まり相手に自分がどう思われているか、パーソナルスペースの感覚からも解ります。
筆者のセラピールームを訪れる方のご相談も、それが上手に作用していないことが原因のお悩みがあります。
・パーソナルスペースが固定化… 人の好き嫌いが激しい
・人への対応を変えることが出来ない… 自分の顔をいくつも持つことが認められないなど
■ パーソナルスペースで“私自身” を変革!
働く女性や子育て中の方は、自分の役割り変化に対する敏感な対応と、相手の環境や年齢に合わせて自分のパーソナルスペースを変化させる必要があります。その時によく耳にするのは「こころを開く」ということ。それが難しい時こそパーソナルスペースで捉えると、目に見えない心の存在がイメージしやすくなります。
同時に、心が感じる距離感は人それぞれ違うことも忘れずに。家族や夫婦、親との間では、子どもの頃や結婚当初の価値観のままで自分を通さないようにしましょう。体力が衰える親の状況に合わせる、成長していく子どもの変化を認める。恋愛においては物理的に近づけているから安心というものではありません。夫やパートナーの弱い部分も受け止めるなど、身近な人との関係性こそ気遣っていたいものですね。
無理をしていたり我慢している関係は何も生み出しません。言葉以外に何か違和感を感じる場合は原点にもどって、心が感じる心地良い関係性や距離のパーソナルスペースを確認してみませんか?
[執筆:桜井まどか(心理カウンセラー)]
【参考】
※ パーソナルスペース(personal-space) は、アメリカの文化人類学者 エドワード・ホール(Edward Hall)による相手との関係と距離感に関する定義。