これまで、「希望しても2年以上妊娠できない状態」と定義されてきた、不妊症。日本産科婦人科学会は先日、不妊の定義の見直しを発表しました。妊娠に至らない期間を「1年間」へと短縮する案がまとまり、今年の8月にも正式決定するとのことです。
■ そもそも、なぜ「2年間」だったの?
妊娠を望む夫婦に通常の性生活があれば、最初の1年で約8割が、2年で約9割が妊娠するといわれています。そのため、ほとんどの人が妊娠する2年を過ぎても妊娠に至らなければ不妊を疑う、とされてきました。
■ なぜ「1年間」に短縮されるの?
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理由1—晩婚・晩産化
男女とも年齢が上がるほど妊娠しづらくなるのは周知の事実。晩婚化の影響でおのずと女性が子どもを授かる年齢が遅くなる「晩産化」は特に深刻で、昭和50年に25.7歳だった平均初産年齢は平成23年には30.1歳にまで伸びました(※1)。卵子の老化や男性不妊など、妊娠や不妊治療にまつわる話題もオープンになってきた昨今ですが、妊娠適齢期についての正しい情報はまだまだ浸透していないのが現実。いたずらに年齢を重ね、不妊が加速するケースは少なくありません。
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理由2—欧米の影響
WHO(世界保健機構)や欧米の生殖医学会では、不妊の期間は軒並み1年間とされており、「1年間」が世界のスタンダード。日本は6組に1組のカップルが不妊症に悩み、約50万人が何らかの不妊治療を受けているにも関わらず、世界の標準からは1年間も“猶予”があったことに、現場の医師や不妊に悩む人からも疑問の声が上がっていました(筆者もその1人)。世界基準に合わせていくのが一般的だと判断するのは頷けます。
■ 期間の変更でどんな変化が予想されるの?
日本産科婦人科学会は「早めに不妊治療を始めるきっかけになれば」と話しています。赤ちゃんが欲しいと思ったら、まずは早期の検査から。筆者としても、不妊治療をするかどうかは次のステップと考えて、まずは婦人科や泌尿器科、不妊外来を受診してみるのが大事だと思います。「たった1年で不妊症と言われてしまうのは、精神的にも外的プレッシャーが大きい」という声などもありますが、妊娠は個人差あれど、基本的には年齢との闘い。先送りをせずに主体的に動いてほしいものです。
[執筆:渡辺さちこ]
【参考】
※1. 『厚生労働省』第1子出生時の母の平均年齢の年次推移 平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況
※ 『毎日新聞』不妊症:定義「1年以上」に短縮へ 産科婦人科学会 2015年05月31日
※ 日本産婦人科学会