よく「人は褒めて伸ばせ!」といいますね。筆者の相談室に夫婦問題のご相談でいらしてくださる方の中にも、「夫が家事をしてくれたときには、結果がイマイチなときでもちゃんと感謝の気持ちを伝えた上で、褒めています」とおっしゃる方が多くいらっしゃいます。でも、夫婦の関係は決してうまくいっているとはいえない……。そんな場合に、もう少し突っ込んでお話をうかがうと、褒めているのにうまくいかない理由が見えてくることがあります。
■ 「褒めて伸ばす」がうまくいかないのは、褒め方に原因あり?
例えば、夫が食器を洗ってくれたとき。妻が夫にかけた言葉が「ありがとう。でも、裏に汚れが残っていたよ」だとしたら……。
そうなのです! この「裏に汚れが残っていたよ」の「でも」に続く後ろのフレーズが夫の気に障るようなのです。
実は、ほめ方にもテクニックがあるようです。(1)ほめた後にけなす、(2)けなした後にほめる、(3)終始一貫してほめる、この3つのうち、褒められた相手が抱く好感度の高さは(2)(3)(1)の順になるそうです。そして、なんと驚いたことに、(2)の「ほめた後にけなす」は「終始一貫してけなす」よりも好感度が低くなるというのです(※)。
だからと言って、夫のことを「終始一貫してけなす」ことは全くおすすめできませんが、後ろに文句をつける褒め方も、相手への褒め言葉としては改めた方がよさそうです。
■ 気をつけてほしいポイントは褒めることで気づかせる!
となると、「夫の家事で気を付けてもらいたいことがあっても、それを指摘することはできないの?」という疑問が湧いてきます。ですが、筆者の回答としては、「それがスルーできる程度であればスルーした方がいい」です。そして、たまたまでも上手にできたときを見計らって、そこを褒めてあげることで気を付けてほしいポイントを伝えるのが得策です。「さすが! 表だけじゃなくて裏もピカピカだね! お皿洗いは裏がポイントなんだよね、ありがとう!」のように。
筆者がこれをできているのかと問われると、恥ずかしながら「言うは易し、行うは難し」と言わざるを得ないというのが実情ですが、せっかく褒めるのであれば、夫も妻もその効果を十分に享受したいですよね!
[執筆:糸瀬 彩湖(行政書士/夫婦カウンセラー)]
【参考】
※ 渋谷昌三(2012)『心理学がイッキにわかる本』西東社
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