赤ちゃんを育てるにあたって、語りかけや“ふれあい”がとてもよい影響を与える—。
最近は“語りかけ”本やベビーマッサージの本などがたくさん出ていますので、すでにご存知のことかもしれません。逆に、語りかけやふれあいがなかったとしたらどのようなことが起こるか、知っていますか? なんと、「自分の子供を愛せない」「子供の口からでてきた食べ物を汚いと思ってしまう」等、女性が母親になり損ねてしまう事態になるというのです。
■母親になり損ねた女性たち
女性が母親になり損ねるという現象のひとつとして、低体重児で生まれた子供に虐待が多いということがあります。アメリカでは低体重児で生まれた赤ちゃんを退院して見送った後、数カ月もしないうちに骨折等の外傷で赤ちゃんが再入院するということが多発しました。
なぜ低体重児で生まれた子供の方が虐待されやすいのでしょうか? 低体重児の場合、赤ちゃんはすぐに母親から離されて保育器に入れられます。その間、ママと赤ちゃんの間で触れあうことができなったため、女性が母親になり損ね、結果として子供を虐待してしまったというのです。
ただし、この研究結果はアメリカで発表されたもの。日本における虐待の実態とは状況が違うと考えられます。なぜなら、日本では伝統的に「添い寝」「母乳育児」が敢行されているためです。母子別室の多いアメリカと比較すると、赤ちゃん退院後に母子関係を修復することが容易だと言えます。現に、日本における虐待件数は、アメリカの15分の1以下であるという報告もあります。
■母性本能のウソ
現代的なお産や育児からわかってきたことは、“母性本能”という本能は存在しないということ。本能として母性が備わっているのではなく、ママと赤ちゃんの濃厚なふれあいを通じて、はじめはぎこちなかった親子関係が徐々にこなれていき、強い愛情で結ばれるというしくみになっているように感じます。
「赤ちゃんが泣く」→「お世話をする」→「泣き止む」→「赤ちゃんが笑う」→「ママも笑う」→「ママに“ワタシの赤ちゃんだ”“かわいい、育てなくちゃ”という感情が湧く」
こんなやりとりを繰り返しているうちに、女性はママらしくなり、赤ちゃんはママに愛着と信頼感を高めていくようになっていきます。特に、最初の親子のスタートである、生まれてすぐからのふれあいがあると、スムーズに母子の絆を築きやすいといわれています。
ママも出産する前は、おしゃれを楽しんだり、友達と遅くまで飲んだり、バリバリ仕事をしたりしている普通の女性だったことでしょう。それが、出産をすることにより、突然いろいろなことが変わってしまいます。“普通”の延長上では考えられないママへの大変身の秘密は、赤ちゃんとふれあいにあったのですね! 赤ちゃんとたっぷりふれあって、幸せ感たっぷりの子育て。子どもの成長を通じて自分も成長できると考えれば、ちょっと楽しみではないですか?
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【参考】
※マ-シャル・H.クラウス/ジョン・H.ケネル(2001年)『親と子のきずなはどうつくられるか』医学書院
※子どもの虹情報研修センター「平成15年度研究報告書 アメリカにおける児童虐待の対応」