日本人女性の年齢階級別の労働力率をグラフで表すと、学校卒業後20歳代をピークにその後、30歳代の出産・育児期に急激な落ち込みを示しています。その後、子育てが一段落した40歳代で再上昇し、アルファベットの「M」のような曲線を描くことから、女性の働き方をM字型カーブといいます。
■ 日本の女性は働きにくい!?
世界と比較すると、M字カーブを描く国は珍しく、ノルウェ-、スウェーデン、アメリカは逆U字型を示しています。日本の場合は、出産・育児期がM字のボトムにあたることから、多くの人が「仕事か家庭か」を迫られた結果、「家庭」を選択していることがわかります。逆U字型の国はそもそもこのような「どちらかを選択する」という考え方のほうが珍しいため、「仕事も家庭も」というのが一般的なようです。子育て中のお母さんでも無理なく働ける環境が、日本よりも整っているということですね。
■ 気になる晩婚化、晩産化とM字型カーブ
厚生労働省によると、この10年でM字のボトムは5歳引き上がっています。平成12 年には「30~34歳」がボトムだったのに対して、平成22年には「35~39 歳」になり、晩婚化が進むにつれてボトムの年齢も後ろにスライドしているのがわかります。私個人の実感としては、働く女性はどんどん増えて社会で広く活躍する方も多くなってきたなというところですが、逆U字型に近づくならまだしも、M字のままボトムの年齢だけが引き上がっている現象に驚きを隠せません。「仕事か家庭か」という二者択一のライフスタイルは今も健在のようです。
■ 高齢出産時代のM字ボトムに潜む「不妊退職」
「出産・育児」が一区切りだとお伝えしてきました。一方で、ボトムの年齢が35歳~39歳に引き上がったことでもう一つの理由も見えてきました。それが「不妊治療」です。
現在、日本では妊婦の4人に1人が高齢出産といわれています。35歳を過ぎると急激に妊娠率が低くなり、不妊のリスクも増加します。私がこれまで取材した中に、「34歳で結婚したが2年間子どもが授からず、不妊治療をスタートさせた」という方がいらっしゃいました。年齢的に責任ある管理職になる方も多いだけに、仕事と通院の両立はなかなかハードです。「仕事はこれから先もできるけど、子どもは今しかない」そう思って、キャリアを中断し不妊治療に専念する方も少なくありません。NPO法人Fineが不妊治療経験者約1000人を対象に行ったアンケート結果によると、全体の約40%が不妊退職の経験があると答えています。
日本では、現在このM字カーブをなんとか解消しようと、ワーキングマザー支援や保育所の整備が進められています。ですが、なかなか理解を得られにくい不妊退職に悩む女性がいるということも、もっと知られてほしいところです。会社単位でのサポート体制にまで話が及ぶのはまだこれからだとは思いますが、時代に応じた対策が必要だと痛感しています。
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【参考】
※ 厚生労働省 「平成22年版 働く女性の実情」
※ NPO法人Fine