若い女性向けに妊娠・出産の知識を広めるため、導入が検討されていた「生命と女性の手帳(仮称)」。政府は5月28日、議論の末、当面配布を見送ると発表しました。女性手帳の話題が公になってからというもの、インターネットは連日さまざまな議論が巻き起こり、「結婚や妊娠出産という個人の問題を国に強制されたくない」とか「なぜ女性にしか配布しないのか」といった批判が寄せられていました。
■ 妊娠教育の必要性
そもそも女性手帳は、晩婚化、晩産化、少子化を食い止めることを視野に、若い世代に結婚生活や妊娠・出産の知識を広める目的で制作が検討されてきました。現在不妊治療をしている方の中には「卵子が老化するなんて知らなかった」「40歳になっても生理があれば普通に産めると思っていた」といった声があり、“知らなかった”ことが機会損失につながったと嘆く人も少なくありません。こうした事実も踏まえ、早いうちからの妊娠・出産教育が重要視されるようになりました。
■ 女性問題から男女それぞれの問題へ
女性手帳はナンセンスだといった批判はいまもインターネット上にたくさん見受けられます。寄せられる意見の大半は「個人の自由に介入している」といったものですが、私は具体的な文章や表現を見てもいないのに結婚や出産を強制しているとは断定できないと思います。むしろ、女性“だけ”の問題として扱われていることに違和感をおぼえました。実際に、不妊原因の半分は男性にあることも分かっていますし、望まない妊娠についても女性だけが苦しむことではありません。「妊娠・出産」、さらに「育児」というキーワードが女性問題という枠の中で考えられることなく、男女の問題として考えていける土台づくりが大切ではないでしょうか。
■ 日米のアプローチの違い
女性手帳の行方が騒がれていた頃、アメリカで注目を集めているというある記事が日本のソーシャルメディアでも話題になりました。「こんなことになるなんて思っていなかった (UNEXPECTED)?」という大文字のコピーとともに掲載された、大きなお腹の「妊娠した少年」の写真です。5月14日付けのシカゴ市公衆衛生局青少年・学校衛生課の公式プレスリリースによると、これは十代の若者たちの望まない妊娠の件数を減らすための大規模なキャンペーンだそうです。十代の少女だけではなく少年たちにも妊娠をイメージしてほしい、子どもを持つことの意味を考えてほしいと掲げられたようです。
少子化問題、妊娠・出産の知識、働きかたや育児問題など。どうしても女性が主体で考えていなかければならない風潮にある日本社会。まずは“男女それぞれの問題”として捉え、考えるクセを作ることが大事だと思います。
[執筆:渡辺 さちこ]
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【参考】
※「「女性手帳」結論先送り 批判相次ぎ 」日本経済新聞2013年5月28日
※ 十代の妊娠は女のコだけの問題ではない! 米・シカゴ市公衆衛生局が示した強烈なメッセージ
※Togetter 女性手帳