昨年、日本でビジネス書のベストセラーとなった『リーンイン』(※1)。著者はハーバード卒のキャリア女性にして、かのFacebookのCOOを務めるシェリル・サンドバーグで、苦労しながらもビジネス界を駆け抜けるキャリアウーマン像が描かれていました。
ところが今、米国ではなんと、高学歴にも関わらず専業主婦という生き方に走る女性が急増中とのこと。そんな社会現象を鋭く描いた『ハイスワイフ2.0』(※2)という本が話題となり、先月日本でも翻訳本が出版されました。
いったい、米国では何が起きているのでしょうか?
■ “主婦回帰”の流れの原因
不況が長引く米国において、20~30代の高学歴女性のあいだで“主婦回帰”の流れが起きている、という衝撃的な事実をハーバード大卒の女性ジャーナリストが詳細にレポートし、米国の有力紙面で論争を呼んだのが『ハウスワイフ2.0』。
著者のエミリー・マッチャー氏は、高学歴女性達が専業主婦を選択する背景には、ベビーブーマーにあたる母親世代の働き方、生き方への強い反発があるというのです。母親世代は、男性優位の企業社会でガラスの天井をぶち破るために家庭や健康を犠牲にして猛烈に働き、戦い続けてきたわけですが、果たしてそれが幸せだったのか、娘世代は冷静にみている、その結果だと。
■ 新しい主婦とは?
そんな娘世代が選ぶ道が“専業主婦”だというのですが、これはただの専業主婦ではなく、インターネットを駆使してビジネスや社会に関わり影響を与える存在になる女性が多く、それが旧来型の専業主婦とは違うという意味で、著者エミリーはそれを「ハウスワイフ2.0」と名付けています。
「ハウスワイフ2.0」の彼女たちは、田舎で自然派育児で子供を育てながら、オーガニック志向な生活を満喫し、在職中に培ったビジネススキルを活かして起業したり、セレブ主婦ブロガ-として全米の憧れを集める者もいるとのこと。会社に縛られることなく、家庭を大事にしながら生活からヒントを得て、自分で時間をコントロールしながら働くママ起業家。そんな新スタイルが、ハウスワイフ2.0なのだとか。
■ バリキャリは痛い
日本でも、このところ一流大学の女性学生がワークライフバランスを重視し、あえて一般職を選ぶという傾向は見られます。
すでにママたちとなった先輩社員も、両立に悩んでいるというのが実態で、出産前と同じキャリアが両立できている非常にスーパーなワーキングマザーは少数派。
そんな中、筆者の知人がハイキャリアワーキングマザーの新しい働き方を提案する会社(※3)を起業し、専門スキルを活かしてフリーランスとして起業から業務委託を受けるワークスタイルが話題を集めています。
今年も働く女性達の価値観やワークスタイルの行方から目が離せません! 皆さんも自分のキャリアとライフのビジョンを考え直してみてはいかがでしょうか。
[執筆:藤崎 葉子(キャリア アドバイザー)]
【参考】
※1. シェリル・サンドバーグ(2013)『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』 日本経済新聞出版社
※2. エミリー・マッチャー(2014)『ハウスワイフ2.0』 文藝春秋
※3 株式会社Waris