いま、少しずつ男性不妊への社会の関心が高まっています。これまで「不妊症」というと女性側の問題と見なされることが多かったのですが、不妊の原因の半分は男性側にある(※1)ということもあり、これから子どもを考えるカップルにとって男性の検査にも注目が集まるようになってきました。
とはいえ、男性不妊の認知度はまだまだ低く、検査や治療への精神的な抵抗を持つ人も多いのが現状。そんななか、男性不妊の検査・治療啓発への取組みと、自治体による男性不妊に特化した助成制度が始まります。
■ 男性不妊の啓発NPOが発足
NHK「NEWS WEB」の報道によると、男性の不妊に対する理解を深めてもらおうというNPO法人が2月に発足し、不妊治療専門医の勉強会で協力の呼びかけを行ったとのことです。
このNPOの理事長を務める国際医療福祉大学病院・リプロダクションセンターの岩本晃明医師は、全国でも数少ない男性不妊の専門医。筆者夫婦も約半年間お世話になりました。
岩本医師によると、不妊全体の半数近くが男性側に原因があるケースであるにもかかわらず、検査や治療に対する理解は不十分であるとし、今後、NPO法人のホームページ上で治療法など男性不妊に関する情報を紹介していくとのことです。
■ 福井県と三重県で男性不妊の助成がスタート
福井県、三重県によると、精巣内から精子を取り出す男性特有の不妊治療を対象に新たな助成制度を平成26年度から始める方針とのこと。
通常、射出した精液に精子がない「無精子症」の場合、精巣を切開して精子を採取し体外受精や顕微授精を行うなどの方法があり、今回の助成はこうした保険適用外の治療に対して独自に助成を始める予定とのことです。自治体発のこうした取組みが国を動かし、助成の拡充につながればいいですね。
少子化が進み、全国で不妊治療へのニーズも高まる中、男性不妊の啓発や助成の取組みが広がっていくのは本当に大切なことです。筆者も男性の不妊治療で四苦八苦してきた一人として、女性だけでなく男性も治療に参加しやすい環境づくりを応援していきたいです。
[執筆:渡辺さちこ(「妊きゃりプロジェクト」主宰)]
【参考】
※1. WHO(世界保健機構)の発表による
※ 『妊活・卵活ニュース』2014年3月11日「「男性不妊」啓発NPO法人が発足」
※ 『msn産経ニュース』2014年2月2日「男性の不妊治療 三重県が助成金 26年度から、都道府県初」
※ 『福井新聞』2014年3月4日「男性の不妊治療に福井県が助成金 単独で全国初、予算に計上」