4月28日朝日新聞朝刊に、「女性役員、増加の兆し」という見出しの記事が掲載されました。それによれば、銀行や証券会社といった金融業界で女性役員が年々増加傾向にあると報じられています。
日本では1986年、男女雇用機会均等法が施行され、仕事の補助的な存在の「一般職」ではなく「総合職」で採用された場合は、女性であっても将来は幹部候補になる可能性がありました。当時、入社してそのまま仕事を続けてきた女性達の中で、企業の役員になる割合が増えているのです。
■ 仕事も結婚も育児も、両方を手に入れた女性達が昇進
仕事か結婚か。または仕事か育児かの選択をするのではなく、その両方とも手に入れた女性達が、今や10代・20代の子をもつ母親世代になっているのです。均等法第一世代ともいわれる彼女達は、連日の残業や海外出張などもこなし、結果を出すため奮闘してきました。その中には、後に続く後輩女性達のために、または娘が将来的に働きやすい社会を作ろうと、歯をくいしばってきた人もいるでしょう。
しかし、がんばって働いている母親の姿に感謝しつつも、違う価値感をもつ女性達がいるのも事実です。
■ 主婦願望の娘に対し、仕事は続けるべきという価値感を押しつける母
母娘問題で悩み相談に来られる方の中にも、こうした人達がいます。
企業の重役として第一線で働く母親をもつA子さん。幼い頃から、残業、休日出勤で母親はほとんど家にいませんでした。その母親がたびたび口にするのは、「女性も社会の一員として働くべきよ。与えられた才能は仕事に活かすべき」。その言葉通り、A子さんは大学卒業後は商社に勤務していましたが、職場の男性と出会い、結婚を意識するようになりました。その後、彼から、海外勤務が多いけれど一緒についてきて欲しいとプロポーズされたそうです。
A子さんは、そのとき初めて自分の本当の気持ちに気づいたと言います。「彼と温かな家庭を築きたい。子供が学校から帰ってきたときに、お帰りなさいと迎えてあげられるような、自分は普通の主婦になりたいと思ったのです」
ところが、母親はA子さんの結婚に大反対。「転勤族の人と結婚したら、あなた、仕事はどうするの?」。娘が結婚しても傍にいて欲しい気持ちをわからなくもないのですが、主婦になることに理解を示さないばかりか、子供時代に寂しい思いをさせたことすら全く気がついていない母親に、嫌悪感を覚えたA子さん。
カウンセリングでA子さんは、一人ぼっちだった子供時代を振り返り、悲しい思いや放っておかれた怒りの感情を整理した上で、母親には、結婚を賛成してもらえるまで説得を続けるという結論を出したのでした。
今は、主婦になることを選ぶ。あるいは、結婚後も仕事を続ける。人生の選択は、人それぞれです。大事なのは、他人の価値観ではなく、自分がどうしたいのか、内からのメッセージを聴くこと。そのために、ときにはカウンセリングを利用してみてはいかがでしょう。
[執筆:真香(母娘問題カウンセラー) ]
【参考】
※ 『朝日新聞』「女性役員 先駆者たちは」2014年4月28日月曜日朝刊2面