■ “母ロス“という言葉を知っていますか?
「母ロス」とは、母親を喪うことを意味します。今年3月、『週刊朝日』には、母親を亡くしたことで悲嘆にくれる娘が増加しているという記事が掲載されました。編集部が実施した調査(※1)によれば、母の死後、半年で立ち直った人は4割強。一方、母の死について「悲しみは死ぬまで続く」と答えた女性は3人に1人という結果が出たそうです。
4月には、NHK放映の番組『あさイチ』でも「“母ロス”―親の死とどう向き合う-」が取り上げられたことから、「母ロス」は、最近注目されるキーワードのひとつと言えるかもしれません。
番組では、母の死を乗り越えられず、家にひきこもりがちになる、睡眠や食事にも影響が出るなど、日常生活に支障をきたす女性達のケースが紹介されていました。
■ 母の死後に感じるのは罪悪感、または怒り
母娘問題カウンセリングを行っている筆者のところにも、母ロスで悩む相談者が来られることがありますが、中には母親とのコミュニケーションがうまくいっていなかった人達もいます。こうしたケースでは、抱えている悩みは二つに分かれます。
一つは、母親が生きていた頃には衝突するばかりで、歩み寄りができず、親孝行ができなかったことに罪悪感を覚えるケース。
もう一つは、母親の支配に苦しめられた怒りを、どこにぶつけたらいいのか分からない苦しみです。
前者のケースの場合には、罪悪感をもつ気持ちの背景に何があるのか、親孝行はもうできないけれど、今、心の整理をするには何ができるのかといったことをカウンセリングによりクリアにしていきます。
後者の「怒りの感情」への対処については、カウンセリングで用いられる「エンプティチェア」というテクニックを使います。これは空の椅子を置き、真向かいに相談者が座ります。空の椅子に亡くなった母親が座っていると想定し、自分の思いを言葉にしていくのです。ときに強い口調になることもありますが、大事なのはストレートに思ったことを口に出すこと。それによって、母親に対して、意識していなかった本当の気持ちに気づくことがあるのです。
母親の死は、誰にとってもつらく悲しい経験です。しかし、母ロスを通して見えてくるものも沢山あります。それは、亡くなった母親からの贈り物でもあるのです。悲しみや怒りの感情にいつまでも囚われずに、一歩を踏み出してみませんか。
[執筆:真香(母娘問題カウンセラー)]
【参考】
※1. 『週刊朝日』「「悲しみは死ぬまで続く」は3人に1人 増加する娘の“母ロス”」2014年3月28日号
※『NHK』朝イチ「“母ロス“親の死とどう向き合う」2014年5月7日水曜日放映
※執筆者:横山 真香(母娘関係改善カウンセラー)について。女性専用のカウンセリング『ボイスマルシェ』の登録カウンセラー。電話カウンセリングなので全国どこからでも利用できる、匿名で話せる、当日予約できるというボイスマルシェの特長を活かし、全国の女性たちから寄せられる母娘関係の相談にのっている。