ポジティブメンタルヘルスという言葉をご存知でしょうか。メンタルヘルスと聞くと、「うつ病」「ストレス」などと暗いイメージをもたれる方も多いと思いますが、最近は「ポジティブメンタルヘルス」という言葉も聞かれるようになってきました。日本の人事部による人事担当者約3,000名を対象に実施した調査でも、ポジティブメンタルヘルスを知っていると答えた割合は2割を下回っています(※)。
今回は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための一助となりうる、このポジティブメンタルヘルスについて取り上げます。
■ そもそも、心の健康とは?
WHO(世界保健機関)の憲章において、健康は「完全に、身体、精神、及び社会的によい状態(well being)であることを意味し、単に病気でないとか、虚弱でないということではない。」と定義づけられています。
たとえば、オリンピック選手で考えるなら「試合当日風邪をひかない」「試合当日骨折をしていない」という状態が健康ということではなく、試合当日にその人の持つ最大限の力を発揮できることこそが健康だということです。
■ ポジティブメンタルヘルスとは
メンタルヘルス対策というと、一部のメンタルヘルス不調者だけが対象と思われがちですが、元気な方々も含めた職場・社会全体の心身の健康度を最高の状態に保つための取組として、このポジティブメンタルヘルスが注目されるようになっています。うつ病などの精神疾患にかからないようにするための対策ももちろん大事ですが、精神的なコンディションを最良の状態に保ち、個々の能力を最大限発揮できる状況を創り上げることこそ、これからの社会で求められることなのです。
■ 自らのメンタル状況を把握することが、当たり前の世の中に
筆者が長年研究している『PEANUTS』の漫画では、スヌーピーが「今日は調子が悪いな、カウンセリング受けてくるよ」というセリフが出てきます。『PEANUTS』のふるさとアメリカはメンタルヘルスの先進国であり、日常の中にカウンセリングを受けることが定着しています。カウンセリングをきちんと受けているから、毎日ちゃんとパフォーマンスを出すことができる、という考え方です。
メンタルヘルス不調は特別なものではありません。ポジティブメンタルヘルスの考え方がもっと広まり、自らのメンタル状況を把握し、少しでも調子が上がらないようであれば早めにカウンセラーに相談する、そのような文化になるように願っています。
[執筆:浅賀 桃子(メンタル心理・キャリアカウンセラー)]
【参考】
※1. 『日本の人事部 人事白書2015』「「ポジティブメンタルヘルス」の認知状況」p165