夫婦関係・離婚カウンセラーの筆者のところには、不倫や浮気がらみのご相談が入ることも多くあります。というよりも、夫婦関係のご相談には、不倫や浮気が絡んでいることが多いという言い方の方が正しいかもしれません。その中でもたまるのが、「離婚をしたいのだけれども、不倫をしたのが自分だから相手が応じてくれなくて困っている」というものです。
■ どんな理由にせよ、不倫や浮気をすれば有責配偶者に
確かに、こういうご相談は一見すると単にムシがいいだけに思えたりもするのですが、「盗人にも三分の理」ということわざの通り、お話を聞いてみると、大体のケースにおいて「なるほど……」と思わせる部分があることも多いものです。
中には「なるほど……」を超えて、「それは無理もないかも……」と思わせるケースや、離婚できないことが気の毒に思えるケースもあります。
でも、どんな理由があったにせよ、不倫や浮気は不貞行為として民法第770条に挙げられている離婚理由となる行為です。自ら離婚理由となる行為をした者は有責配偶者となり、自ら離婚を請求することはできないというのが基本です。
■ 不倫や浮気が発覚すれば、離婚するのは至難の業に
有責配偶者からの離婚請求は、絶対に認められないというわけではありません。ですが、判例では有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んだこと」「未成熟子の不存在」「相手方配偶者が離婚により精神的・社会的にきわめて過酷な状態におかれることがないこと」という3要件が満たされることが必要だとされています。
この3要件に照らしてみれば、不倫や浮気が発覚した場合には、自らそれをした方が離婚したいと思っても、いかにそれが難しいことかがお分かりになるかと思います。
中には、「離婚したいと思ったのは、自分が浮気をする前からで、離婚したいという思いと自分の浮気とは関係がない」ということを主張される方もいらっしゃいますが、なかなかそんな主張は通りません。そんな主張が通ってしまうのであれば、判例の3要件なんて骨抜きになってしまいますからね。
ここからひとつ言えることは、本当に相手と離婚したいと思っているのであれば、そのストレスを安易に不倫や浮気で解消しようとしないことです。発覚すれば、離婚したいというそもそもの願望が遠のいてしまうということをお忘れなく。
[執筆:糸瀬 彩湖(行政書士/夫婦カウンセラー)]
【参考】
※能見善久 加藤新太郎(2013)『論点体系 判例民法<第2版> 9 親族』 第一法規株式会社 pp.173
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