育児介護休業法ではすべての企業に3歳未満の子どもがいる社員に短時間勤務を認めるよう義務付けています。大企業の中には、子どもが小学校低学年の間は短時間勤務を許可するなど、法律を大幅に上回る制度を設ける企業が珍しくありません。
■ 企業が抱える本音と建前
しかし、筆者が大企業の役員や人事担当者にヒアリングしたところ、「育休明けに時短を利用しても、できるだけ早くフルタイムに復帰してもらいたい」という意見が主流でした。充実した制度という建前はあっても、あまり利用してもらいたくないのが本音のようです。本コラムでは、ライフイベントを迎える女性社員が会社と友好な関係を築きながら育休復帰する上で意識してもらいたい視点を紹介します。
■ “企業視点”を持とう!
企業の人事担当者や現場の管理職層からは、「育児休業や短時間勤務の制度を当然のものとして、最大限利用しようとする女性社員が増えて困る」という声が聞かれます。
赤ちゃんを保育園に預けることは、最初は大きな不安を伴うものです。しかし、会社員の育休期間は1年ぐらいが一般的。会社の制度でそれ以上取得できるからといって特別な理由がないのに育休を延長するのは得策ではありません。企業ではあなたが育休中に派遣スタッフや契約社員を補充したり、上司や同僚がカバーするなど、様々な手間やコストをより長く引き受けなければならないからです。
短時間勤務についても同様です。時短の間、他の誰かが業務をカバーする必要がありますし、対応できる業務が限定されてしまいます。さらに、企業としては短時間勤務が長引くことによる社員のスキルアップの機会の損失も懸念しています。
筆者としては、子どもが3歳を超えても時短で働きたい女性の気持ちも痛いほど分かります。残業体質の職場の場合、フルタイム勤務になった途端に子どもの夕食や入浴、就寝の時間が後ろ倒しになってしまうかもしれないからです。特に、夫や双方の両親などに保育園のお迎えをお願いできない家庭にとっては深刻な問題ですよね。
とはいえ、企業に勤める以上、“企業視点”を持って個人の事情との折り合いをつける必要があります。妊娠中や育休中、育休明けは自分都合で考えてしまいがちですが、それでは会社との関係は悪化の一途です。上司と育休明けの働き方について話をする際は、ぜひ“企業視点”を取り入れてください。
[執筆:椎葉 怜子(働き方コンサルタント/キャリアカウンセラー)]
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