産後は骨盤ケアをしましょう。巷ではよく言われることです。実際に、産後の体型回復、骨盤のゆがみ解消などを謳い、産後骨盤コースを設けているカイロプラクティックや整体院もあります。
「骨盤ケア」の言葉だけが独り歩きして、「骨盤ケアって何をするの?」「そもそも骨盤ケアをして本当に産後のダイエットになるの?」と筆者は疑問に思ったものでした。そこで今回は産後の正しい骨盤ケアについて考察します。
■ 骨盤よりも大切な骨盤底筋群
産婦人科医の宋美玄先生によると、「骨盤の骨格だけのケア」でなく、「骨盤についている筋肉(骨盤底筋群)のケア」重要性とのこと。骨盤底筋群は尿道、膣、直腸の出口付近を取り巻く、骨盤の底のあたりの筋肉の総称でガードルの様な役割を果たします。これらの筋肉が緩んだり傷ついたりすると、子宮や膣、膀胱が支えきれずに下がってきて、尿漏れの原因にもなるとか。妊娠出産(特に経膣分娩)ではこの骨盤底筋群がかなり損傷するのです。
■ 骨盤底筋群を鍛えるには
骨盤底筋群を鍛えるために、産婦人科では膣トレーニングが指導されています。具体的には排尿を途中で止める感覚で力を入れたり緩めたりするトレーニングです。しかしながらこれは実はあまり効果がないというデータもあるようです。今では、膣の奥を締める、膣の一部を締めてゆっくり脱力する等のトレーニングが最新とのこと。宋先生は、専門医に正しいトレーニングを教えてもらうことをお勧めしています。正しいトレーニング方法を知れば、自宅でも簡単にできるようです(※1)。
いかがでしょうか? 宋先生はその著書で「女の人には、骨盤の歪みを正せばみるみる治るという妄言よりも、正しい骨盤底筋群ケアを知ってほしい」と語っています(※1)。確かに、「産後は骨盤ケアをしてダイエット!」こんなセンセーショナルなキャッチも目にします。巷にあふれる都市伝説を、一度疑ってみることも必要なのかもしれません。
[執筆:久保木 惠子(コーチ)]
【参考】
※1. 宋美玄(2014)『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』講談社
※写真:PIXTA、本文とは関係ありません