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無痛分娩で出産したらダメですか? 罪悪感を感じたら
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無痛分娩で出産したらダメですか? 罪悪感を感じたら

フランスは無痛分娩を受ける妊婦さんが多い国として知られています。フランスにおける2010年の調査では、経腟分娩の約80%もの女性が無痛分娩をしています。一方、日本において無痛分娩で出産する妊婦の割合は、2007年調査では2.6%と非常に低いのが現状です(※1)。

そこには「お腹を痛めて産んだ子」「出産の痛みや苦しみを経てこそ母親」そんな痛み称賛神話が存在するように感じます。産後ママのサポートコーチの筆者の元には、無痛分娩で出産したことに罪悪感を抱くママも相談に訪れます。

 

■ 出産の痛みと我が子への愛情は比例する?

無痛分娩にて出産をしたA子さんは、もうすぐ8ヵ月の赤ちゃんのママです。「出産の痛みを伴ったからこそ、わが子への愛情が湧く」「出産の痛みがあったからこそ、母親の自覚が湧いた」などのママ友や先輩ママの言葉を聞くたびに、壮絶な陣痛の痛みを経験していない自分の出産に負い目を感じ、無痛分娩だったことを言いだせずにいました。

更に、陣痛を経験していない自分は愛情の薄い母親なのでは、とすっかり子育てに自信を無くしていました。

 

■ 頑張ることも、緩めることも大事です

もともと人一倍努力家のA子さん。これまでの人生、勉学に仕事と人一倍努力してきました。「頑張ることは美徳」という価値観のおかげで、沢山のことを成し得てきました。それはとても大切な価値観です。しかしながら今回は、その価値観が足かせとなってしまったのです。「陣痛の痛みを経験せずに出産したこと=努力をしていない」と自責の念にかられてしまったのです。

これからの人生は、努力することだけでなく、自分を労わることも出来たらもっといいですよね。頑張ることも大事、それと同じくらい、緩めることも大事なのですから。

 

■ フランスでは出産方法をたずねない

アメリカ人の著者が、フランスでの妊娠、出産や子育てを通じて生じた気づきを綴ったエッセイ「フランスの子どもは夜泣きをしない」にこんな一文があります(※2)。

フランス人のママから、「どこで出産をするか」と尋ねられることはあっても、出産方法を尋ねられたことは一度もない。どうでもいいことなのだ。フランスでは、出産方法がその人の価値観の指標になったり、子育てのスタンスを決めたりすることはない。それは、赤ちゃんを子宮から母親の腕の中に安全に運ぶための手段にすぎないのだ。

ちなみに、著者は「自然出産をすると英雄扱い」と感覚を抱いていたとのことですが、フランスにて無痛分娩で出産をしています。

 

違う価値観や視点に触れることで視野がぐっと広がることもあります。特に妊娠・出産・子育て期は自分の価値観の棚卸に最適な時期です。そして、今のあなたが不必要と感じる価値観や思い込みは手放してもいいのです。今のあなたが必要とする価値観だけ手のひらの中にあれば、あなたの人生はもっとシンプルになりますよ。

[執筆:久保木 惠子(コーチ)]

 

【参考】
※1. 日本産科麻酔学会 JSOAP「無痛分娩Q&A」
※2. パメラ・ドラッカーマン(2014)『フランスの子どもは夜泣きをしない パリ発「子育て」の秘密』集英社
※写真:PIXTA、本文とは関係ありません

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